第一章「ガチでUFOを研究する」






    1

 二〇二一年五月四日。その日、私は朝はやく起きると、食事もそこそこにして家を出た。
 最寄(もよ)りの駅から電車に乗り、新宿にむかう。
 ひさしぶりに味わう朝の空気が心地よかった。
 自由業のため、ふだんの私は昼すぎに起床する生活を送っている。だがこれでも若いころはキチンと会社勤めをこなしていたのだ。電車に()られていると、なにやらかつての自分を取り戻すようだった。
 JR新宿駅に着くと、駅構内のコンビニで予備のマスクとお茶を買い求め、立川行きの中央線に乗り込んだ。時刻は八時すぎだった。
 五月の連休だというのに、電車内はがらがらだった。
 比較的はやい時間帯だったせいもあるけれど、本来であれば行楽地にむかう乗客で車内は満たされていたはずだ。そういう人たちの姿が見られないのは、四月二十五日に政府から出された緊急事態宣言の影響だろう。
 新型コロナウィルスの災禍(さいか)は終わりが見えず、普段のほほんと生きている私ですら、息がつまるような日々をすごしていた。外出時のマスクも、行く先々での検温も、他人との距離感も、ストレスとなって少しずつ積み重なっていく。なんだか世界がギシギシと音を立てて壊れていくような感覚があった。
 電車が動き出すと、私は右手だけで苦労しながらペットボトルのキャップを開け、ひと口飲んだ。スマートフォンで乗り換えの確認をおこなう。
 めざす目的地は東京西側の、あきる野((1))
 アポの時間は午前十時だったが、それほどゆとりはない。
 乗り換えアプリで確認すると、新宿からあきる野市まで、二時間ちかくかかる。東京が東西にひょろ長いのは知っていたが、あらためてその広さに驚かされる。
 今日これから会うのは、SNSで知り合った男の子たち三人組だ。
 そのうちのひとりは、春に都内の大学に進学したというのに、オンライン講義ばかりで友だちをまったく作れない状況なのだという。連休中は帰省しているらしく、ひさしぶりに幼馴染の三人組がそろっているとのことだった。
 彼らは「ガチでUFOを研究している」らしく、実際にUFOとの第三種接近遭((2))をした体験者でもある。
 第三種接近遭遇。
 この仰々しい言葉は、映画「未知との遭((3))」の原題としても有名だ。
 その定義は、UFOの搭乗員(とうじょういん)と直接接触すること──つまり、宇宙人と(じか)に会うこと、というのだからおだやかではない。
 私はこれから彼らに会って、その体験の取材をさせてもらおうというのである。
 いい年齢をした大人がコロナ禍の最中、わざわざ電車を乗り継いで、なにゆえにそんな眉唾な話を聞きにいこうとしているのか?
 それには理由がある。 
 じつは、私も見てしまったからだ。UFOを、この目で。
 いったい、アレは何だったのか──もしUFOが現実に存在するのだとしたら、その正体は何なのか。本当に宇宙人の乗り物なのか。
 私は、真相が知りたいのだ。

 二時間ののち。電車はあきる野市のJR秋川(あきかわ)駅に到着し、私はいそいで改札を出ると、待ち合わせ場所に向かった。
 指定されたのは駅近くのファミレスで、SNSのメッセージで到着を伝えながら店内に入っていくと、相手方はすでに窓際のボックス席にすわっていた。
 いまどきの清潔感のある若者たちだった。
 彼らはこちらを見て、会釈してくる。
 会釈を返しながら、さりげなくスマートフォンの表示を確認すると──なんということだろう、時刻は午前十時を五分ほど過ぎていた。
 ……まさか社会人である私のほうが遅刻するなんて。
 気まずい気持ちになりながら、テーブル席に行き、あいさつを交わした。
 席に座って名刺を渡し、まずは遅刻したことを()びる。
「あはは、気にしないでください。新宿からけっこう遠かったでしょ?」
 マスクごしでもわかる人(なつ)っこい笑顔を浮かべた男の子は、名まえを宮地(みやじ)くんといって、今回の取材の場をセッティングしてくれた人物だ。中性的な容姿で、どことなく韓国の俳優のような雰囲気がある。
「あー初めて来るひと大抵びっくりするよね、ここ本当に東京?つって」
 そのとなりに座る男の子が、あいづちを打つ。ややぽっちゃりとした体型で、髪はうねうねしたスパイラルパーマ。丸い顔に黒縁眼鏡をかけている。彼は、安達(あだち)です、と自己紹介をしてくれた。
「あ、どうも阿刀川先生。あの、僕が〝ゆうちゃむ〟です。あの、先生にダイレクトメッセージを送った……」
 ひとりだけアカウント名をなのったのは、さきほどまでメッセージのやりとりをしていた相手だ。
 先日、私がSNSでUFOの情報を募集した際、連絡をくれたのも彼である。
 UFOの情報(もと)む、などとネットに書き込むと、集まるのはあやしげな陰謀論やスピリチュアルな内容ばかりになってしまう。だが、〝ゆうちゃむ〟くんのくれたダイレクトメッセージは、それとは一線を画していた。……というより、彼の送ってきた一枚の画像に興味を持ったのだ。
「……あ。すみません、本名は土井(どい)勇斗(ゆうと)です。ゆうちゃむってのは中学のときのあだ名で」
 勇斗くんは現在一八歳の大学生。
 ちなみに、宮地くんと安達くんが共に二〇歳。三人は中学校が同じで、部活も同じテニス部だったそうだ。
「あの、僕、じつは先生の漫画けっこう読んでます。NONE!とか好きでした」
 勇斗くんは、私が原作を担当した漫画の読者で、以前からSNSをフォローしてくれていたらしい。NONE!は、苦しい記憶ばかりの作品だったが、過去の仕事が思いがけないかたちで次につながったりすると、がんばってよかったなと思う。
 それにしても──と私はあらためて三人組を見て思った。
 みんなごく普通の男の子たちで、UFOなどという胡乱(うろん)な存在を真剣に探求しているとは思えなかった。オカルトとは縁が遠そうなのだ。
 いったい彼らからどんな話が聞けるのだろうか。
 三人の許可を貰い、ボイスレコーダーで録音を開始する。
「……じゃあ、さっそくなんだけど」
 と、私はわくわくしながら本題を切り出した。
「例の写真、見せてもらっていいかな? UFOの痕跡らしきものっていう……」
「あっハイ。ですね」
 代表して宮地くんが答え、カバンからタブレットを取り出した。
 電源を入れて、指でフリック操作をしながら、
「写真を撮ったのは、俺らが小学生のときです。自分たちのスマホをもってなかったんで、親のを借りて撮影しました。場所は、すぐ近くの秋川です。近いといっても、このファミレスから歩いていくと結構かかるけど……」
 小学生のとき、ということは、今から十年ほど前だろうか。当時の画像データを削除したりしないで、最近のデバイスにも保存したのだろう。 
 私は身をのりだすようにタブレットをのぞきこんだ。
 画面に映されていたのは、河川敷の風景だった。
 一面に生い茂った雑草はどれも枯れ草色をしていて、乾燥させた(わら)をしきつめたかのように見える。画面の上端には黒々とした川が流れているが、水深は浅そうだ。
 問題は、画面のまんなかだ。
「角度が悪いんでちょっとわかりにくいんですが、模様があるのが見えますか?」
 宮地くんは画像をすこしだけ拡大した。
 余計な部分をトリミングしたような効果があって、わかりやすくなる。
 河川敷の草地に、図形が描かれていた。
 それは、自然にできたとは思えない、幾何学的な図形だった。
 刈ったのかそれとも引き抜いたのか、草地のなかに草の生えていない部分があって、それが黒ずんだ線になっている。その線によって、巨大な円が描かれ、それを囲むようにいくつかの小円がある。
「道路から撮った写真もあります。なるべく俯瞰(ふかん)の視点ほしかったんで。……あの時はガードレールに昇って、安達に体を支えてもらいながら撮ったんだよな?」
「おう。あれ、あぶなかったわ」
 安達くんが苦笑する。
 危険を冒して撮影したという写真も見せてもらった。
 河川敷沿いの道路から見下ろすように撮影したおかげで、全体像がより理解しやすくなっていた。草地の図形はかなり大きい。大円を囲んでいる小円は6つあって、反時計まわりに(うず)をまきながら、すこしずつ直径が大きくなっている。まるで、大円から小円が飛び立とうとしているかのようなデザインに見えた。
「これってミステリーサークル?」
 私が思わずつぶやくと、「あ。知ってましたか」と宮地くんは両目を細めた。
「大きい円の直径は、六メートルくらいあります。だいぶ目立つというか、主張が強いことになってますけども。見た瞬間、俺らもマジ?ってなりましたね」
「爆笑したよな。絶対ここに宇宙人いたやん!ってなった」
「安達はゲラゲラ笑ってたな、俺はどっちかというと怖かったんだけど」
 ミステリーサークルを撮影した思い出を楽しそうに語るふたりは、どうやらそれを武勇伝のように考えているらしい。
 どことなく釈然としない気持ちで勇斗くんを見ると、彼は気まずそうに目を()せて口を閉ざしていた。
 おや?と思う。
 勇斗くんは何か言いたそうだった。
 私も問いかけてみたいことがあったのだが、今はあえて追求しないことにした。他のふたりより年齢が下というのもあるが、彼は引っ込み思案な性格なのだろう。
 勇斗くんへの質問は頭の隅にメモしておいて、とりあえずミステリーサークルを撮影した経緯を()いてみる。
「えーと、さっきも言いましたけど、これを撮影したのは小学生のときです」
 と、宮地くんが言う。
「何年前だろ? 二〇一二年だからもう九年前になるのかな」
「俺らが小六んときやね」と安達くん。
「うん小六。勇斗は小四かな? このメンツで戸吹(とぶき)公園に遊びに行ったんです」

      2

 二〇一二年四月十五日の日曜日。
 宮地くん安達くん勇斗くんの三人は、自転車に乗って戸吹(とぶき)公園に行った。
 戸吹(とぶき)公園というのは、あきる野市と八王子市の中間に位置するスポーツ公園のことだ。タブレットで公式サイトを見せてもらったが、公園という言葉のイメージを凌駕(りょうが)する場所で、サッカー場、ラグビー場、テニスコート、スケートパークと園内の施設はかなり充実している。
 三人はここでミニテニスをして遊び、夕方一八時頃に帰ることにしたそうだ。
「……で、自転車をこいで秋留(あきる)橋まで戻ってきました。橋を渡ったところの交差点で、それぞれの帰り道が別になっちゃうんですけど……なんか別れづらくて。ほら、すっげえ楽しかった日って、それを終わらせたくないってなりませんか?」
「ああ、あるね。わかるよ」
 私にも覚えがある。小学生のころ、学校から帰るとちゅうで友だちと一緒に寄り道して、家に帰りたくなくなったことがある。明日学校に行けばまた会えるのに、その場をはなれるのがさみしかった。
 宮地くんたちも、それと同じ状態になったのだという。
 自転車にまたがったまま話をつづけ、だれも「帰る」と言い出さず、話がとぎれそうになると、べつの話題をひねりだしたりして、別れを惜しんだ。
 そして気がつけば、あたりは真っ暗になっていたのだという。
 秋留(あきる)橋を渡っていく車のテイルライトがキレイだった、というから、太陽はとっくに沈み、おたがいの顔も見えにくかったことだろう。
「たぶん、夜の一九時くらいだったと思います。時計とか見てないのでわかりませんが。で、さすがに帰るかって空気になったときに、勇斗が、アレ何?って」
 ふいに大声を出した勇斗くん。
 彼は驚愕したように空の一点を見つめていた。
 宮地くんも視線を上げてみると、夜になりつつある空に、なにか明るくて大きなものが浮かんでいた。それはかなりの光度で、最初は街灯かと思ったらしい。安達くんも同じように空を見て「(まぶ)し!」と叫んだ。
 タブレットを使い、グーグルアースのストリートビューで秋留(あきる)橋を見てみる。
 正確な位置ではないものの、だいたいこのあたり、と当時の三人が立っていた場所を提示してもらった。
 現場は、あきる野インターチェンジがあるせいで、道路はごちゃついている。
 だが、橋の上は視界をさえぎるものがなく、空はよく見えた。
 都道169号線が南に伸びており、謎の発光体は方角的にほぼ真西、斜め45度上空に浮かんでいるように見えた。宮地くんいわく「首の骨がゴキッと鳴った」らしいから、かなり見上げる体勢になったようだ。
「しばらくボケーッと光を見ていましたよ。みんなひと言も喋らなかった」
「それ、絵にかける? どんな感じだったのかな」
「いいですよ。かきましょうか?」
 私は持ってきた取材ノートを渡し、三人に絵を描いてもらった。
 一般的にUFOというと、円盤型や葉巻((4))である。
 だが、彼らが描いたのは、いびつな三角形だった。あえていうなら、菓子パンのスコーンに似ている。色についても三人ともほぼ一致していて、宮地くんは「ものすごく濃いオレンジ色」、安達くんは「メロンみたいな色」、勇斗くんは「ハロウィンぽい、かぼちゃみたいな色」。
 もちろん十年ちかい年月が経つあいだに、共通の認識が醸成(じょうせい)された可能性はある。が、この三人が明るく発光する「ナニカ」を見たことはまちがいなさそうだ。
「ふーん。なんか、あんまり宇宙船っぽくないんだね」
 率直に言うなら……私はすこしガッカリしていた。
 彼らが目撃した発光体は、正体不明であるものの、形状からして宇宙人の乗り物ではなさそうだと感じたのだ。
 同時に、脳裏に疑いがわいた。
「あの、怒らないでね。もしかして、月だった……なんてことはないよね? ほら、月って満月のときは、不気味な色になったりするじゃない?」
 濃いオレンジ色、と聞いて、まっさきに連想したのは月だった。
 夜空に目を向けたときに、ビックリするくらい濃いオレンジ色の月に出くわした経験がある人は多いのではないだろうか。
 そういう奇妙な色をしているときは、経験上、満月かそれに近い月齢だった。そして、満月なら見た目にも明るいだろうと思ったのである。
 だが、宮地くんは「月じゃないです」と首を横にふった。
「たしかに満月ならかなり明るく見えるはずですが、日没直後に満月が西の空に浮かぶってことはないです」
「えっそうなの? どうして?」
「月ってのは自力で光ることができないから……どういえばいいんだろう。満月になるときは、地球をはさんで、太陽が逆側にあるときなんですよ」
 宮地くんはペンを取って、ノートに太陽と月と地球の位置関係を描いた。
 天文学の素養(そよう)に乏しい私にはすぐには呑み込めなかったが、記憶をふりしぼってみると、たしかに不気味な月を見たときは、日没直後の東の空に、しかも地平線すれすれに浮かんでいた気がする。
「月じゃないかってのは、俺らも疑ったんス」と横から安達くんが言う。「なんか月齢を()せているサイトってのがネットにあって、調べたら、この日は三日月だったんです。さすがに三日月はあんなに(まぶ)しくないんで、絶対にちがいます」
 余談だが、あとから私も調べたところ、二〇一二年四月十五日は、月齢23・5の細い三日月で、月の入は昼の12時40分だった。つまり、そもそも三人が発光体を目撃した時間帯に、空に月は浮かんでいなかったことになる。
 どうやら、月の見まちがえ説は否定されたよう((5))
 話を、ふたたび九年前にもどそう。
 秋留(あきる)橋の上から光る「ナニカ」を見つめていた三人だったが、急に勇斗くんが「光が弱くなってない?」と言い出した。
 言われてみればたしかに、弱くなっていた。最初に見たときは強烈な光で直視できないほどだったのに、今では色や形が判別できるようになっている。
 それどころか宮地くんは「落ちてきている」と感じたそうだ。
 アレ落ちてきてね?と思わず言うと、他の二人も同意見だったらしく、「ゆっくりとだけど落ちてきてる」「墜落してるのかも」と口々に言い合って、一気にその場がヒートアップした。「落ちるとしたら、たぶん川のむこうだ」。
 行ってみよう、と今となっては誰が言い出したのかわからないが、とにかくそういうことになって、三人は自転車にまたがり、秋留(あきる)橋を渡りだした。
 弱まりながら高度を下げていく光を追いかけながら、都道169号線を南下し、150メートルほどいったところで交差点を右折した。
 そのころには光は消えそうなほど弱々しくなっていて、三人はあわてて自転車を()ぐ速度を上げた。だが、とうとう光は視認できないほど弱くなってしまい、墜落の瞬間を見逃してしまった。
「だけど河川敷のどこかだと思いました。ギリギリまで目で追っていたから。それほど遠くないとわかっていました。だから、そのまま自転車を()いでいったんです」
「もうかなり暗かったはずだよね。それでも河川敷のあたりとわかったの?」
 私は宮地くんに疑問をぶつけてみた。
 半分は(かん)ですけど……と宮地くんは答えた。
「でも、実際に現地にいってもらえればわかるんですけど、あのへんって下り坂になっているんですよ。坂の上から河川敷を見下ろす形になっていたので、落ちた場所の目星がついたんです。もう少し長く光っていてくれたら、よかったんだけど」
 グーグルアースで墜落地点を確認してみる。
 地図で見ると、すぐ近くに東京サマーランドという遊園地があるようだ。
 私はふと、遊園地の来場者は何か見ていないだろうかと気になった。
 もし流星のように光る物体が落ちてきたのなら、誰かしら気付いただろうし、ネットにそのことを報告しているかもしれない。
 思いついたことを口にしてみると、
「いやあ残念ですけど、それ系の報告は見つからなかったですね」
 と、宮地くんは言った。
「え。そうなの? なんでだろう」
「サマーランドってプールがメインなんで、四月はオフシーズンっていうか。屋内プールもあるんですけど、一七時で閉まっちゃうし」
 三人が光を追って河川敷に到着したのは、一九時から一九時半のあいだ。
 東京サマーランドは、とっくに閉園時間だった。
 駐車場は閑散としていて、園内も真っ暗になっていたらしい。
 四月の夕暮れ。周囲に人影はなく、灌木や草が繁茂(はんも)する河川敷は暗闇のなかに沈んでいる。営業が終了した遊園地は、少年らの目にどのように(うつ)っただろう。
 わりと怖いシチュエーションだと思うのだが、興奮していた彼らは、まるで臆することなく、道端に自転車をとめて議論をはじめた。
 自分たちが見たものについて。それに、これからどうするかについて。
 もしかしてUFOではないか?というのは、自転車を()いでいた時点で三人の心のなかに浮かんでいた考えだった。
 自分たちは本物のUFOを目撃したのでは?
 しかも、それは目の前の河川敷に墜落したのでは?
 三人は話し合った。
 今すぐ河川敷に下りていって墜落現場を見つけようと言ったのは、宮地くん。
 それよりも一度家に帰って大人を連れてこようと言ったのは、安達くんと勇斗くん。
「ぶっちゃけビビってたのもあるんですけど、それだけじゃなくて」と安達くんは、そのときの状況を振り返りながら言った。「まじで暗くて、あぶないと思ったんですよね。いくら浅いといっても川は川だし。せめて明かりがないと、って」
 彼らはスポーツ公園で遊んだ帰りで、懐中電灯など当然持っていなかった。
 せめてスマートフォンがあれば光源になったのだが、三人とも持っていなかった。
 こんなに暗くてはとても探せない、と安達くんたちは説得を続け、宮地くんもしぶしぶ同意しそうになったとき、ふと三人は闇に染まった河川敷のほうから何者かが歩いてくることに気づいた。
「あれは小便ちびりそうになった」と安達くんは言う。
 だれもいないと思っていたのに、人がいた。しかも河川敷のほうからやって来る。
 UFOが墜落したかもしれない暗闇の中から。
 それだけでも怖いのに、その人物は様子がおかしかった。
 以下はその証言である。
「緑色のジャージ上下のおじさんだった。年齢は五〇歳くらい」「腰にウェストポーチみたいなのを着けていた」「ぼんやりとした感じ。酔っぱらっているみたいだった」「ちょっと焦げ臭いニオイがした。焚き火をしたときのニオイに似てた」
「俺らに近づいてきて、なんか知らんけど〝水もってる?〟って聞いてきた」
 そう言って、不快そうに安達くんは鼻の頭に(しわ)をよせる。
「〝水もってる?〟って言ったの?」と私は首をかしげた。
「そうそう。第一声が〝水もってる?〟だった」と宮地くんがうなずく。「最初はカネもってる?と言ったのかと思ったんですけど、なんども繰り返して聞いてくるから。なんだったんだろうアレ。〝水もってる?〟〝水もってる?〟って」
「僕にも、安達くんにも聞いてきたよね」と勇斗くんが言う。「持ってませんって答えたら、なんかガッカリしたみたいに来た方向に戻っていっちゃったんです。で、僕ら、怖くなっちゃって……」
「まあ、そりゃあ怖いよね。意味不明だし」
「ええ」と勇斗くんはしみじみとため息した。「で、時間もおそいし、オジサンとまた会いたくないし、その日は帰ることにしたんです。でも、気になるじゃないですか。だから、つぎの日、学校終わったあとにみんなでまた行ってみて……」
「で、さっき見てもらったミステリーサークルを河川敷で発見したんです」と宮地くんが言葉を引き継いだ。「緑ジャージのオジサンがいた場所と同じかわかりませんけど、でもまさかあんなものがあるとは思わなくて、さすがにゾッとしました」
「なるほど。そのときにスマートフォンで撮影した、と」
 宮地くんが手をあげて「はい。俺の親のスマホで」と言った。
 なるほど、と(うな)った私は黙り込んだ。
 しばらく考えてから「でもあれだよね」と口を開いて、
「……光る物体を見たこと、河川敷に謎のオジサンがいたこと、翌日行ったらミステリーサークルがあったこと、一見すると一本の糸でつながっていそうだけど、もしかしたら、それぞれは関係ないかもしれないよね?」
 九年前、三人が正体不明の発光体を見たこと自体は、疑っていない。
 だが、結局三人は発光体が墜落する瞬間を目撃していないのだ。
 さらに、光が墜落したらしい現場で、謎のオジサンと遭遇したとしても、両者を直接結びつける因果は何もない。それは翌日発見したというミステリーサークルも同様である。
「そのとおりです」
 と宮地くんはうなずいた。
「安達は、あのオジサンは宇宙人だ!って断定してますけど、俺と勇斗はそう考えていないんです。むしろ不審者のほうが可能性ある。それに、あのとき見た光も宇宙人の乗り物だとはどうしても思えないんです。UFOだとは思いますけど」
 UFOという言葉は、一般的に宇宙人の乗る宇宙船のニュアンスで使用されているが、本来的には「未確認飛行物体」。たとえ鳥や飛行機の見まちがえだったとしても、正体が判然としないうちは、UFOなのである。
 ただ……と宮地くんはうつむいた。顔の肌に(かげ)が落ちる。
「思い返してみてもモヤるんですよねぇ……うまくいえないんですけど、なんか誘導されていたんじゃないかって」
「誘導?」
「うーん。何者かにハメられたというか、罠にひっかかったというか。どう言えばいいんだろう、こういう言葉を使うとちょっと違う気がするんだけど」
 宮地くんは適切な表現が見つからずに苦慮(くりょ)しているようだった。
 誘導。ひっかかった……?
 その言葉から類推すると、たとえば大掛かりなドッキリを仕掛けた何者かがいて、三人は見事にそれにだまされて、UFOや宇宙人がいると誤認させられた、とか、そういうことなのだろうか。
 それを宮地くんに伝えてみると、
「うーん。ちょっと違うかな。なんていうんだろ、めちゃくちゃ運悪いことあると、誰かにハメられたみたいに感じるけど、実際には人間は介在してないじゃないですか。でも、そういう運命をわざと(つか)まされたって感じるというか……、なんか変なフラグ踏んだなというか。……っと。阿刀川さんってゲームやる人ですか?」
「うん。大丈夫わかるよ」
「よかった。じゃあまさにフラグです。俺たちフラグ踏んじゃったんです」
 いちおう解説しておこう。
 フラグというのは、元はコンピュータ用語だ。
 ゲームにおける意味は、条件分岐のトリガーとでもいおうか。たとえばRPGでは、村の村長と会話することでフラグがオンになり、新たなイベントが発生したりする。現在ではその意味が拡大解釈され、「伏線」や「予兆」の意味で使われることもある。
「フラグか。……でも、誰かがそのフラグを作ったんだよね?」
「わかりません。そんなの作れるのかな?って気はしますけど。でも、あの日、あの場所にフラグがあったと考えると、しっくりくるんです」
 正直、よくわからなかった。
 彼のいうフラグも、どことなくスピリチュアルめいて聞こえる。今回UFOを調べるにあたって、陰謀論とスピリチュアルのアライメントは退けようと決めていた。そういう意味で、ちょっとマズイ方向に傾いてきたぞ、と私は考えていた。
 そんな私の変化を読み取ったのか、宮地くんは目を細めて薄く笑った。
 そしてこんなことを言い出した。
「歴史上、もっとも〝ガチでUFOを研究した〟人たちって誰かわかりますか?」
 私が首を横にふると、彼は続けて言った。
「二十世紀のアメリカ空軍です。1947年から1969年頃まで、国の予算つっこんじゃって、正体不明の飛行物体を本気で研究していたみたいです。で、それだけのビッグバジェットを費やして得られた結論が、UFO目撃報告の95パーセントは誤認。未判明は全体の5パーセントにすぎない、ってことでした」
 5パーセント。
 はたして多いのかすくないのか。
 ここで後から私が調べた資料による、後づけの補足をしよう。
 米国のUFO調査機関「プロジェクト・ブルーブッ((6))」が収集した目撃情報は、1万2618件である。宮地くんが言ったとおり、そのほとんどは月や鳥や飛行機の見まちがいで、正体不明だったのは640件だった。ちなみに情報不足により判定不能とされた件数は2409件あり、データには含まれていない。
「注意しなくちゃいけないのは、未判明が5パーセントあったとしても、あくまでその時わからなかった、というだけで、本物のUFOの目撃件数ではないってことです。そして、あくまで俺個人の考えなんですけど、未判明5パーセントも、その正体は宇宙人の乗り物じゃないと思います。たぶん別の〝何か〟ですよ」
 宮地くんは言う。
 おだやかな口調なのに、強い意思がこめられていた。
「別の〝何か〟って、……たとえば?」
 私は、そう質問せざるをえなかった。
 宮地くんは照れくさそうにマスクの下で頬をゆるめる。「ごめんなさい、わからないです。俺も知りたいですよ。アレがなんだったのか、ずっと探してるんですから」
「そっか。……ねえ、さっきフラグって言ったよね?」
 私は質問の方向性を変えてみた。
「もしゲームだったら、フラグを立てたことによって、新しいイベントとかアイテムの入手チャンスがあったわけだ。この場合なんだったと思う? 九年前、フラグを立てたことによって、君たちにどんな変化がおきたのかな?」
 三人の顔を順番に眺めていく。宮地くん。安達くん。勇斗くん。
 それぞれの顔は、微妙に困惑しているようだった。
「わからないけど」と、ぽつりと言ったのは、安達くんだ。「もしかしたら、あの光は、河川敷に行けっていうサインだったのかなぁとは思う」
「河川敷に?」
「うん、宮地のいうフラグとは別に、そういうサイン。俺らにあの河川敷に行けっていう、なんかナビゲート?だったのかも」
 ちょっとわかる、と宮地くんも首肯した。
「もしかしたら、あのミステリーサークルを見つけてもらいたかったのかもね」

      3

 ランチタイムになり、店内が混雑してきた。
 私たちは営業の邪魔にならないように退店することにした。
 取材前に予想していた内容とは大幅に異なっていたが、なかなか興味深い話が聞けたので、私は満足していた。
「漫画の原作者さんってことは、つぎの作品はUFOネタなんですか?」
 駅に向かう道すがら、雑談をする。
「いや、漫画にはしないと思う」と私。「ノンフィクションの単行本で企画持ち込んでダメだったら、同人誌にでもしようかな」
「あ、そうなんですね。そういえば俺ら、今度ユーチューブで活動を始めようかって計画してまして。ノンフィクションで本を出版するということなら、いつか俺らのチャンネルとコラボしてくれませんか?」
「それって、UFO関連のチャンネルなの?」
「基本的にはそうですね。でもUFOネタだけだと動画更新頻度(ひんど)が落ちちゃいそうなんで、オカルト全般で行こうって話し合っています。今は機材を揃えて勉強しているところですけど、わりと見切(みき)り発進しちゃおうかなって」
「なるほど。じゃあチャンネル開設したら教えてね」
 駅前にもどってきたが、私はこのあとタクシーをひろって秋留(あきる)橋や東京サマーランド周辺に行くつもりだった。せっかく二時間もかけて取材に来たのだ。現地の写真を撮らなくては意味がない。
 三人は「それならお供します」と申し出てくれたが、丁重に断った。
 タブレットで説明してもらったおかげで大体の場所は(つか)めていたし、取材のときはできればマイペースにぶらぶらとしたい派なのだ。
 ということで、三人とはここでお別れとなった。
 駅前にはバスロータリーがあったが、タクシー乗り場はパッと見で見当たらなかった。アプリで呼ぶか大通りに行こうかと迷いながらその場で仕事のメールをチェックしていると、ふいに誰かに名前を呼ばれた。
「阿刀川先生」
 振り返ると、そこには勇斗くんが立っていた。
 どうしたのだろうか。さっき別れたばかりなのに、ひとりだけ戻ってきたらしい。走ってきたのか、息があがっているようだ。私はまばたきを繰り返しながら、勇斗くんに「どうしたの?」と問いかけた。
「ちょっと、先生に、見てもらいたいものがありまして……」
 大きく息をひとつ吐いて、勇斗くんは荷物から何かを取り出す。
 そういえば、と私も思い出した。
 私も彼に訊ねてみたいことがあったのだった。頭の片隅にメモしていたのに、うっかり聞きそびれてしまった。私が気になっていたことと、彼がわざわざ戻ってきた理由は、もしかしたら同じかもしれない。
「どうぞ」
 と勇斗くんが差し出したのは、古びた小冊子だ。
「これは?」
 と受け取る。どうやら写真のミニアルバムのようだ。
 スマートフォンが普及する以前、写真というものはカメラで撮影して、専門店で現像してもらうものだった。カメラ屋やプリント屋から返ってきた写真は、ミニアルバムに収納して保管するのである。
 表紙をめくってみる。
 目に飛び込んできたのは、あざやかな緑色。水田を撮影した写真だ。視点がかなり高いから、おそらくは脚立(きゃたつ)をつかったか、何かに登って撮ったのだろう。水田は稲穂(いなほ)が実る前の段階で、季節は初夏といったところか。
「なるほど……このまえSNSで送ってくれた画像はこれだったのね?」と私。
「はい」と勇斗くんは真顔でうなずいた。
 数日前、ネットでUFOの情報を募集したとき、勇斗くんは「UFOを見たことがあります」とダイレクトメッセージを送ってくれたのだが、そのときに「自分が所持するUFO関連の画像」も見せてくれたのである。(みょう)に白飛びした画像だなと思っていたが、実物の写真をスマートフォンで撮影したものだったわけだ。
 私は画像の(もと)となった写真を見た。
 それは巨大なミステリーサークルを記録した写真だった。水田の青々とした稲が、図形を描くように根こそぎ倒されている。ただし、こちらの図形は、円形(サークル)ではなく螺旋(スパイラル)だ。(うず)の巻き方に特徴があり、カタツムリの殻のように、中心に向かうにつれてグルグルが過密になっている(ちなみに数学的にはクロソイド曲線というようだ)。
 異なる点がある一方、秋川河川敷のミステリーサークルと、共通している点もある。どちらの図形も、大きな円の周囲を小さな円が囲んでいるのだ。小円の数は、秋川河川敷が6つだったが、こちらは4つだった。
 私はミニアルバムのページをめくっていった。
 基本的にはどれも同じ画角であり、水田に出現したミステリーサークルを場所を変えて撮影した写真ばかりだった。
「なるほど。ありがとう」と私はミニアルバムを返却しながら言った。「でも、どうしてさっきファミレスで見せてくれなかったの?」
「それは……宮地くんに止められたからです。見せないほうがいいって……」
「どうして?」
「うーん……白状しますと、これ、インチキなんです。UFO関連の画像ってダイレクトメッセージには書きましたけど、あれは嘘です。すみません……」
 勇斗くんが語るには、この写真が撮影されたのは、今から三十年ほど前の一九九三年。撮影者は勇斗くんの祖父だそうだ。
 水田の所有者も彼の祖父で、このミステリーサークルはUFOと何も関係なく、どうやらいやがらせを受けた結果らしいのだ。
「じゃあ、コレは、人間が作ったってこと?」
「はい。祖父によれば、犯人が自首してきたらしいです。しかも、じいちゃんの知人だったらしくて。田んぼ荒らされて作付(さくつけ)のほとんどをダメにされちゃったから、当時かなり揉めたらしいです。金銭的にもだけど、仲の良かった人だったらしいから、どうしてこんなことしたのかって……」
 勇斗くんの祖父と犯人との間に、トラブルや確執(かくしつ)は何もなかった。
 酒飲み友だちだったらしく、事件の数日前にも会って、楽しい時間を共有したらしい。ところが、そんな友人が突如豹変した。深夜勇斗くんの祖父が所有する水田に侵入し、足で稲を踏んで複雑な螺旋(らせん)模様を描いてみせた。
 なぜそんなことをしたのか?
 当時、勇斗くんの祖父も問い詰めてみたらしい。
「〝わからない〟って答えたらしいです。〝どうしてあんなことしたのか自分でもわからない〟って……。泥酔して奇行に走ったのだろうということで、周囲は結論したみたいですが、でも犯人は、実はその日お酒飲んでなかったみたいなんですよね。なんかおかしくないですか? 僕、ミステリーサークルそのものより、なぜそんなものを作ろうと思ったのかという点が、どうしてもひっかかるんです……」
「たしかに。普通は作ろうと思わないもんね」
「はい。残念ながらUFOの仕業じゃなく人間が作ったものだけど、この記録写真は重要だと思っています……。なにかのメッセージじゃないかって」
「メッセージ?」
「……はい。宮地くんたちはフラグとかサインとか言ってましたよね? 僕にとってはメッセージです。誰かが何かを伝えようとしたんじゃないでしょうか?」
 九年前のあのときも、きっとそうだったんだ。
 勇斗くんはそう言って、五月の晴れた空に何かを思い描くような表情をした。



注 釈

(1)あきる野市
 東京都多摩地域にある都市で、東京にある市では最西端に位置する。1995年9月に秋川市と五日市町が合併して発足した。秋川と平井川の二つの河川が流れ、平坦部と奥多摩に連なる山間部で形成されている。東京とは思えないほど自然豊か。
(2)第三種接近遭遇
 ジョーゼフ・アレン・ハイネックによる分類によれば、第一種…150メートル以内の近距離からの目撃のうち物理的証拠をのこさないもの。第二種…UFOが周囲に影響を与えて物理的な証拠をのこしたもの。第三種…UFOの登場者、宇宙人の目撃──となり、第一から第三に進むにつれて、よりシリアスで物証の確かな遭遇体験とされる。ちなみに第四種接近遭遇まで存在し、第四は宇宙人による誘拐・アブダクションである。
(3)未知との遭遇
 1977年に公開されたアメリカ映画。監督はスティーヴン・スピルバーグ。予告編のキャッチフレーズは「Watch the skies」。全米でUFOをほのめかす怪奇現象が頻発し、異星人が存在することを確信した地球側が「彼ら」との接触をするために第三種接近遭遇プロジェクトをスタートさせるというストーリー。電光掲示板による光信号と「レ・ミ・ド・ド・ソ」の5つの音によって、UFOとコンタクトをとるクライマックスシーンが感動的。本作の監修をしたジョーゼフ・アレン・ハイネックはエキストラとしてちゃっかり参加している。
(4)円盤型や葉巻型
 UFOは円盤型や葉巻型で有名だが、他にもさまざまな形状が報告されており、卵型・三角型・ドーナツ型・V字型・らせん型などがある。変わったところでは人型があり、こちらはフライング・ヒューマノイドとも呼ばれる。
(5)月の見まちがえ説
 本文にある通り、月と見まちがえた可能性は低い。だが後の調べによって、この日は金星(宵の明星)の最大光度にちかいことが判明した。金星は地球よりも公転軌道が内側であるために、月のように満ち欠けして見える。周期は約一年七か月であり、地球からもっとも離れた位置から東方最大離角(月でいう下弦の月)を経て徐々に明るくなり、地球に最接近するにつれて暗くなり、最接近した後はふたたび明るくなっていく、というように明るくなったり暗くなったりをくりかえしている。2012年4月15日は、西の空に金星がかなり明るくかがやいていた。最大光度の金星は、一等星の220倍。UFOと見まちがえたとしても不思議ではない。ただし、三人が共通して主張した「光の色は濃いオレンジ色」という点は矛盾する。
(6)プロジェクト・ブルーブック
 米国では1940年代からUFOの目撃報告が増加していたが、政府には公式の調査機関が存在しなかった。AМCのネイサン・トワイニング司令官は軍に正式な調査機関を設立する要望を送り、1947年に「プロジェクト・サイン」とコールされる調査プロジェクトが正式に開始された。が、同プロジェクトの最終報告は軍の賛同を得られず、1948年に「プロジェクト・グラッジ」と改名。改名後は、UFOそのものよりも目撃した人間側を調査対象とし、UFOとはたんなる自然現象もしくは目撃者の誤認と結論づけ、プロジェクトは解散された。だが1952年にUFO目撃報告が爆発的に増加すると再度調査機関を編成する必要に迫られ、チームは「プロジェクト・ブルーブック」と名付けられた。この時科学顧問に任命されたのが、オハイオ州立大学の天文学教授だったジューゼフ・アレン・ハイネックである。