(おと)ー!!待ってたよ!!」


「いるか、声大きいよ‥‥‥」ちょっとひやひやしながら、隣に座る。



「だってー‥‥‥初めからがいいな~と思って、待ってたのに」


「じゃあ、巻き戻そうか」もう開始30分は過ぎている。


「やっ!!たぁあー‥‥‥」


「あは、そんなあからさまにしなくてもいいのに」


「私の声、普通でもうるさいって言われちゃうから」確かに。それはそうだ。


「じゃー、巻き戻しちゃうよ?」そんなに僕のこと、ちらちら見なくても。


「‥‥‥怒ってないよ?」


「そういうことじゃなくってぇ‥‥‥‥」どういうことなんだろうか。
   



____それから1時間半。
視界の端で跳ねる白を見ながら、映画を観ていた。

途中、「あっ!!隠れリス!!」「このりんごほしいー!!」みたいなことを言いながら観ていて、だいぶ賑やかに過ごせた。


僕はひとり親だし、映画を観ることもあまりないから、
こうやって自分以外の誰かとわちゃわちゃとしながら観るのは、なんだか新鮮で。

いるかの水色のイヤホンを2人で分けあって観るのも楽しかった。





「あー面白かったぁー!!」ひと仕事終えたみたいな声で、隣で伸びをする。カウンターにDVDを戻して、荷物を取りに戻る。



「えっ‥‥‥‥!!(おと)、もう帰っちゃうの?」


「‥‥‥‥うん」テスト勉強もあるし、そもそも天文部は休みだし。


「そっかぁ‥‥‥‥」と寂しそうにする。

そんな態度を取られてしまうと、行くのも憚られるというか‥‥‥‥。