『え……?』


脚を止め,声が聴こえた方へと歩き出した。どこから声がしたのかはわかないが,改札へと向かう階段を通り過ぎ,ホームの端へと歩き続けた。


『どこ……?』


 あの人がいる訳がないことも,声がしていないことも,頭の中ではわかっていた。こんなところにいるわけがないこともわかっていた。それでも脚を止められなかった。心のどこかで,あの人が偶然同じ電車に乗っていたんじゃないか,ホームで私を見つけて声を掛けてくれたんじゃないかと淡《あわ》い期待をした。

 誰もいなくなったホームを見回し,声が聴こえてきた方を探した。

 苦しいほどに胸が高鳴り,会いたいと思う気持ちが私の身体から溢れ出ているように思えた。涙が止まらず,あの人の名前を叫びたかった。人の目など気にせず,大声で大好きだった名前を気が済むまで叫びたかった。


『私はただ生きているだけで,あなたに気持ちを伝えられなかったことをずっと後悔している。フラれてもいいから,もう一度会ってちゃんと告白したい。私の気持ちを伝えたい。なにが正しいのかなんてわからないけど,告白しなかったのが間違いなのはわかっている……』