「いや……実はまだ……数回しか会ってないんだけど……」


「え……?」


 数回しか会っていない女に大切な優が取られたと思うと,悔しくてどうしようもなかった。


「数回って……何回……?」


「えっと……四回……」


 由香子の頭が真っ白になった。優が自分から離れた理由がまったくわからなかった。


「あ,あの……四回って……も,もうセックスはしたの……?」


 優は答えにくそうにし,少し間があいた。


「……うん……」


 もしかしたらまだ優の気持ちが浮ついているだけで,少し時間をおけば戻ってきてくれると勝手な期待を抱いていたが,《《セックス》》という言葉を聞いてすべてが吹き飛んでしまった。


「ねぇ……どうして……どうして……約束を破ったの……? なんで,裏切ったの……?」


「マジで……ごめん………」


 どうしてよいのかはわからなかったが,もう元に戻れないことを悟った。


「あ……あの……じゃあ…最後にもう一度だけ……直接会って欲しいんだけど……」


「え……いや……できればこのまま,もう会いたくないんだけど……」


「でも……こんな電話だけで終わるの嫌じゃないの……?」


「だって会えば寂しくなるじゃん……」


「やだ。どうしても会って……こんなに長く付き合ったのに……こんな電話で終わらせたくないの……」


 少し間があったが,電話の向こうで優が考えているのが手に取るようにわかった。


「うん……じゃあ……どうしようか……」


 優がどうしたらよいのかわからなくて困っているのも,会うことを了承したがいつどこで会うべきか悩んでいるいのも由香子には手に取るようにわかった。