お互いに結婚まで考えた付き合いをしていたのに,最後の最後にもっともしないようにしようと二人で決めた約束を簡単に破った優が理解できなかった。

 もし,優が他の人を好きになっても,裏切る行為だけはして欲しくなかった。もし,優が他の人と付き合いたいから別れようといわれても,きちんと二人で話し合って決めたかった。


「ねぇ……どうして……どうして……裏切ったの……?」


「ごめん……。でも,俺……由香子といても楽しくなかったんだ……。それに……由香子にそのことを伝えようと頑張ったけど……」


「聞いてないよ……そんなの……。な,なんで,ちゃんと言ってくれなかったの……?」


「何度も言ったよ……。でも聞いてくれなかったじゃん……」


「じゃあ……いま。いま聞くから……。私,変わるから……」


「ごめん……。もう……本当に好きじゃないんだ……」


 由香子は自分でも信じられないほど,優を愛していた。

 今までだったら浮気した相手を許すなんてことは絶対に有り得ないと思っていたが,優を失うのが怖かった。やり直してくれるのであれば,チャンスをくれるならいくらでも変わろうと思った。


「本当にごめん……」


 信じていた相手に心を踏みにじられ,心を締め付け押し潰されそうになったが,わずかに残ったプライドが折れかかった心を支えていた。


「新しい彼女はどんな人なの……?」


「え……? そんなこと聞きたいの……?」


「……うん……」


 自分より魅力のある女がどんな人なのか知りたかった。絶対にどんな女より自分のほうがすべてにおいて頑張っているし,魅力があると思っていた。そんな自分から優を奪った相手がどんな女なのか知りたかった。