AさんはBさんの実家を訪ねた。
Bさんの両親と会うのはBさんの葬式以来とのこと。
一軒家のチャイムを鳴らすと玄関から男性が出てきた。Bさんの父親だ。父親はBさんの部屋へ通してくれた。ベッドや本棚、机などBさんが亡くなる以前のまま残っているようだ。

以下、AさんとBさんの父親の会話だ。
(以下、Bの父親を父親とする)

父親:こうやって今日もBのために家まで来てくれてありがとうね。Bもきっと喜んでいるよ。

A:そうですかね。そういえば、Bのお母さんは今日はいらっしゃらないんですか?

父親:妻は…、亡くなったよ。まるでBの後を追うように自ら命を絶ってしまって。

A:そんな…。Bから聞いてました。お母さんに妊娠されていたって。それなのに…。

父親:多分、もう正気じゃなくなっていたんだと思う。
Bが亡くなってからずっと思い詰めていたようで。

A:私、実はBのお母さんに恨まれていたんじゃないかって思っていたんです。

父親:そんなはずはないよ。Aちゃんは被害者だ。顔向けできないのはこちらの方だよ。

A:事故が起こる直前、Bが何か私に伝えようとしていたんです。少し思い詰めていたような声で。何か心当たりはありますか?

父親:家で最後に会った時は、特に変わった様子はなかったはず。ただ、家を出る時にリビングにノートを置いていったんだけど、そのノートに変なものが書かれていたんだ。

A:変なものですか?

父親:ちょっと待ってね。あー、これこれ。このノートなんだけど。

A:あ、このノート…。

父親:Aちゃんも見覚えのあるノートなの?手書きで呪文のようなものが書かれているんだ。

A:このノート、少し預からせていただいてもいいですか?

父親:大丈夫。都合の良い時にまた返しに来てくれたらいいよ。

A:ありがとうございます。お借りします。

以上が2人の会話だ。

Aさんは挨拶をしてBさんの自宅を出た。

「このノート。Bと2人で降霊術をした時に使ったノートなんです」

Aさんは手書きで呪文のようなものが書かれているページを開いた。

「あの日、私はBと神社で降霊術をやってみようって話になったんです。でも、降霊術をした後の記憶がなくて。もしかすると降霊術に何か原因があるんじゃないかと思いまして」

Aさんは携帯を取り出し電話をかけた。

「もしもし、C?今から会える?…わかった。いつもの喫茶店で15時に待ち合わせよう。じゃあ、また後で」

電話を切ると、ここから車で15分ほどの喫茶店へ向かうことになった。