Aさんから指定された場所に到着すると、Aさんは道路の脇に置かれた花瓶に花を供えて手を合わせていた。
Aさんは〇●大学に通う21歳の女性である。一年前、友人のBさんはここで交通事故を起こして亡くなったという。Aさんの通う〇●大学の友人のようだ。

「事故が起きたあの日、私も彼女の運転する車の助手席に座っていました。私だけが奇跡的に助かりました。Bが座っていた方は壁にめり込むようにグチャグチャになっていました」

BさんはAさんと会話している最中に突然ハンドルを切り壁に車を衝突させたという。道に何かがいたから避けた訳でもなく意図的にハンドルを切ったようだ。

それまでBさんに特に変わった様子はなくいつも通りだった。ただ事故が起こる直前にある疑問が残る会話をしていたという。

以下、AさんとBさんの会話だ。
なお、当時のAの「記憶」を頼りに話してもらった内容になる。

B:ねぇ、あの日のこと覚えていない?
A:あの日の…こと?
B:2人で神社に行った時に話したこと
A:…覚えてない
B:本当に覚えていないんだよね?
A:うん、思い出せない
B:あのね…私…ごめん!

以上がAさんとBさんの会話だ。

ここでBさんはハンドルを切ったという。

「Bが言っていた〝あの日のこと〟というが気になっていて。神社に行ったことは覚えているのですが、Bと何を話したのかということがどうしても思い出せないんです」

Aさんはこの場所へ来るとBさんと交わした最後のやり取りを「記憶」を思い出すという。その時、BさんがAさんに伝えようとしていたことが何なのかが知りたいようだ。

「この後、Bの実家に行くことになっています。そこでご両親からお話を聞きたいと思っています」

Aさんとタクシーに乗り、Bさんの実家へ向かった。