……えっと、ここはどこでしょう。
 見たところ何か倉庫のように見えますが。

「拷問ルームだよ。捕まえてきた人間を閉じ込めるために借りてるんだ」

 これはまたサイコキラーっぽい施設ですね。
 誰から借りている物件なんですか?

「それは内緒。守秘義務ってやつね」

 なるほど、失礼しました。
 拷問ルームとのことですが、それは●●さんの趣味ですか。
 もしくは何らかの仕事なのでしょうか。

「仕事だね。こいつを拷問してほしい、みたいな感じで依頼されるんだよ」

 物騒な話ですね。
 どれくらいの頻度で依頼が来るのですか。

「だいたい月に一回か二回くらいかなー。時期によって増えたり減ったりするけど」

 ペース的にはそれほど忙しくなさそうですね。
 依頼者は裏社会の人間ですか。

「基本そうだけど、最近は一般人の依頼も多いよ。ムカつく人間をターゲットにするパターンが増えてきたかな」

 つまり私怨ですか。
 拷問はフィクションに近い話だと思っていましたが、意外と身近に潜んでいるようですね。
 私もなるべく他人の恨みを買わないように注意します。

 ところで●●さん。
 拷問を見学させてもらうことは可能ですか。

「うん、いいよー。ちょうど監禁してる人がいるんだ。顔だけモザイクかけといてね」

 承知しました。
 おや、椅子に拘束されている人がいますね。
 スーツ姿の……サラリーマンでしょうか。
 年齢は四十歳くらいです。
 口にタオルが詰め込まれていますね。
 怯えながら喚いています。

「あの人が持ち出した顧客情報の在り処を吐かせるのが今回の仕事なんだ。詳しい事情は知らないけどね」

 拷問する人間の素性が気にならないのですか?

「え、興味ないよ。知ったところですぐに忘れちゃうからね」

 被害者に感情移入しないのがサイコキラーを続けるコツというわけですね。
 非常に参考になります。

「大内さん、ちょっと拷問やってみる? 道具とか貸すよ。ほら、見てみてよ」

 金槌にペンチ、ドライバー、チェーンソー、硫酸、ドリル、ハサミ、アイロン……種類が豊富ですね。
 これは●●さんが購入しているのですか。

「そうだね。気に入ったものを選んでるよ。それで、拷問は体験してみたいの?」

 申し訳ないのですがやめておきます。
 あまりにグロテスクな映像は番組に使えないので。

「さっきの殺人シーンはセーフなの?」

 遠いアングルで一瞬でしたからね。
 至近距離での拷問はさすがにアウトです。

「じゃあこのシーンはカット?」

 一応撮影して、ヤバそうな場面は有料配信とかでいいかもしれませんね。
 あとは特別な顧客に販売するとか。

「スナッフフィルムってこと? やっぱりそういう商売もあるんだねー」

 ここはカットするので内緒にしてくださいね。
 番組用の映像は一旦ストップします。