累プロパゲーション

 祖父が施設に入り、長男の自分は社員寮で、長女の姉が母の生家を継いだ。祖母は子供の頃から家に泥棒が入る事が度々あった所為か、心配性で大事だと思った物は何でも箪笥や押入れ、納戸にしまい込んだ。祖母が亡くなった後に断捨離したが、姉は物が多いと電話で嘆く。また整理に駆り出されるだろう。

「大事だからって兄弟を何年も納戸に詰め込んどくのはどうかと思うよ。まあ今は元気に学校も部活も頑張れてるけどさ」

 突然の一人暮らしをする羽目になった姉の声は明るいが、やはり転職と引っ越しで病んでしまったのだろうか。適当に口実を作って、祖父母の家に向かう。壁と屋根は綺麗に塗り直され、庭には雑草もなく、祖父母が健在だった頃の家が建っていた。

「久しぶり。今チョコと苺のパイ焼いてるんだけど食べる?」

 お菓子なんて買う方が手っ取り早いって言ってなかったっけ。弟が食べるからって俺和菓子派だよ。ベランダの物干し竿にはスポーツウェアが何枚か干してあり、玄関にはスポーツシューズが端から端まで並んでいた。