「すぐ行くから、電話切るなよ」
円満に別れた元カレに今の住所を教え、一度会話が途切れる。示された違和感に激しく動揺した頭で、この家に引っ越してきたからの事を思い返す。
初めて会った時、疑問に思わなかったわけじゃない。小さな違和感は確かにあった。齎される優しさと賑やかさに目が眩んで、確認を怠った。ガチャン、何かの音がする。開錠と施錠。
呼吸が浅くなる。ガタガタと震える躰を抱きしめる。震えは酷くなる一方だ。
ひた、ひた、ひた……。
過敏になった聴覚が音を拾う。あれ、これ、誰の、元カレは他県で。パチンと明かりが点いた。
「お姉ちゃん、電気つけないと危ないよ」
軋む首を回して見上げた先、部屋の入り口で困ったように笑う少年がいる。脇に置いていた携帯を取ろうとした手は宙を掴み、ハッと前を向けば入口の少年と違う制服を着た少年が携帯の電源に指を掛けていた。テレビのザッピングのように見えているモノが掻き乱される感覚。二階から降りてくる数人の足音。見知った人間の形をした見知らぬ子供達が、完璧な笑顔で自分の退路を断っている。
ザアッと血の気が引く音がした。
円満に別れた元カレに今の住所を教え、一度会話が途切れる。示された違和感に激しく動揺した頭で、この家に引っ越してきたからの事を思い返す。
初めて会った時、疑問に思わなかったわけじゃない。小さな違和感は確かにあった。齎される優しさと賑やかさに目が眩んで、確認を怠った。ガチャン、何かの音がする。開錠と施錠。
呼吸が浅くなる。ガタガタと震える躰を抱きしめる。震えは酷くなる一方だ。
ひた、ひた、ひた……。
過敏になった聴覚が音を拾う。あれ、これ、誰の、元カレは他県で。パチンと明かりが点いた。
「お姉ちゃん、電気つけないと危ないよ」
軋む首を回して見上げた先、部屋の入り口で困ったように笑う少年がいる。脇に置いていた携帯を取ろうとした手は宙を掴み、ハッと前を向けば入口の少年と違う制服を着た少年が携帯の電源に指を掛けていた。テレビのザッピングのように見えているモノが掻き乱される感覚。二階から降りてくる数人の足音。見知った人間の形をした見知らぬ子供達が、完璧な笑顔で自分の退路を断っている。
ザアッと血の気が引く音がした。



