累プロパゲーション

 妹から「部活の人きてるよ」と呼ばれて玄関に向かった。一応チェーンロックを付けたまま扉を開けると、薄い茶髪を三つ編みにした制服姿の少年が立っていた。知った顔ではないというか、自分が通う学校はブレザーであって学ランではない。校則で男子のロン毛禁止されてるし。閉めようとした扉は簡単に片手で止められ、反対の手がニュッと突き出された。

「妹の代わりに返しに来ました」

 ゴムで束ねられた手紙には心当たりがあった。クラスメイトを抱き込んで、クラスの陰キャボッチに送った不幸の手紙だ。厚さからみて全員分だろう。目が笑ってない笑顔のまま玄関をぶち破ってくるのではないかという恐怖心から俺は反射的に土下座した。後頭部に手紙の束が落とされる。

「確かに返しましたよ」

 先程の凄みのある態度とは裏腹に、少年はあっさり帰っていった。許されたと思った俺は、陰キャボッチ以外のクラスメイトがそれなりの不幸に遭ってもコレが罰だと甘んじて受け入れる事が出来た。