12月1日、東京都内の自宅で40歳女性が、忽然と姿を消した。
女性はその日一日在宅で仕事をしていたとされるが、小学2年生の子どもが帰宅したときにはすでに女性の姿はなかったという。仕事から帰ってきた夫である男性が異変に気づき、警察に通報。
警察は近辺を捜索するも、2日現在、行方不明となった女性はいまだ発見されていない。
女性は専業作家だった。
ウェブの投稿サイトで異世界をテーマにした小説を公開したことを機に、書籍を出版。ライトノベルは年々需要の高まる傾向にあり、実際に読者の反響も非常に大きかった。書籍はシリーズ化し、一介の主婦だった女性はまたたく間に人気ラノベ作家へと転身した。
執筆・校正作業は基本、自宅で行っていたという。事実、行方をくらました日も、女性の書斎に置かれていたノートパソコンには、投稿サイトのマイページや原稿を打ちこんだワードソフトが開かれてあった。
今しがたまで女性がたしかにそこで作業していたことを物語っていた。
しかし、不可解な点がある。
書斎の床に紙の原稿が散らばっていたというのだ。
ノートパソコンのあるデスクの上はとてもきれいに整頓されているのに対し、床は足の踏み場もない。窓は開いておらず、その状況下は人為的に作られたとみて間違いなさそうだった。
推敲段階だったのであろう、ところどころ赤いインクのついた何十枚もの原稿用紙は、一部ぐしゃぐしゃに破かれていた。たまたま床に雪崩たとは考えにくい。
不可解な点は、もうひとつある。
なぜか風呂場の浴槽から、円の中に星を印した図の書かれた正方形の紙が発見された。しかも、1枚や2枚ではなく、十数枚近くあったという。
浴槽にはわずかにぬるま湯がたまり、紙の多くが浮かんでいた。書斎同様、誰かがここにいた揺るがぬ形跡である。
ここでいったい何があったのか。
女性はどこに消えてしまったのか。
警察は事件性も考慮して捜査を続けている。
女性は身長160センチ、痩せ型、黒髪。失踪時は、白いニットにジーンズを身につけていたとされる。
現在、周辺での目撃情報は上がっていない。



