一章 朝の日の出







うるさく鳴いたアラームでまた今日も私は起きた。
私は重い腰を上げてベットから立ちカーテンを開けたその時、真っ白な光が私の目に映り込んだ。
「う…眩し……」私はそう呟き、窓越しに外を見た。
犬を連れて散歩する人、黄色い帽子を被り歩く小学生たちの姿、いつもの光景のはずだった。
だけれど、私にはこの光景は眩しすぎる。
私はこの世界に居てはいけない汚物でしかない。
そうぼんやりと思いながらカーテンをサッと閉めた。
いつからだろう、私が自分自身を嫌いになったのは、
もう小さい頃のような綺麗な純粋な目で外を見れなくなったのは。



私は自分が嫌いだ。とろくて鈍くて卑屈で他人に迷惑をいつもかけてしまう自分が大嫌いだ。
そんなことを毎日繰り返し思いながら今日も身支度を整えて学校へと向かう。確か今日は部活見学の日だ。
めんどくさいなとため息をつきながら「行ってきます」と言い外へ出て行った。

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電車に揺られ、外をぼーっと見つめ時間を潰しているうちに駅に着いた。
私は電車から降りて改札を潜り抜け駅から出て行った。
やっぱりこの電車登校にはまだ慣れない。中学生の頃は学校が近かったからいつも自転車で向かっていたからだ。
スタスタと歩きようやく学校に着いた。



いつものように授業を受け、いつものようにお昼を食べてあっという間に放課後になった。
担任の先生が「この後は部活見学だから自由に見回れよー」ということだけ言い、教室から出て行った。
部活見学に対しては興味は微塵も無かったが親が「一応気に入る部活もあるから見に行ってきなさい」と言われたものだから見に行かなければならない。
早く家に帰りたい。とある空き教室の前にチラシが一枚、ポツンと貼ってあった。「写真部、素敵な写真は撮りたくないですか? 入部希望者はこちら」という文字を目にした。
私は写真には興味がないので引き返そうとしたが、
「あ!!もしかして入部希望者さん!?」と声をかけられてしまった。
「あ、えと、あの……」急に声をかけられ、おどおどしている私をよそにその人は言った。「俺、2年の涼って名前。びっくりさせちゃったらごめんね…ここは写真部って言うんだけど色々な写真を撮ったり鑑賞したりする部活なんだ」と彼はお日様のような眩しい笑顔で言った。
「そうなんですか…じゃあ私はこれで……」と私は逃げるようにその言葉を伝えたが彼は「待って」と私を引き留めた。
「えと、はい?」と聞き返すと「部員が俺ともう一人で今年で潰れるかもしれないんだ、だからちょっとだけ仮入部して欲しい…!」と先輩に懇願された。
生憎、私は頼まれたことを断れない性格だった。
私が無言で考えていると先輩がこう言った。
「とりあえずなんだけどこの写真を見て考えて欲しい…かな?」先輩から差し出されたのは一枚の朝日の上る写真だった。「綺麗……」と反射的に口を出してしまうほどそれは美しい写真だった。黄色やオレンジ、水色、青などの様々な色のグラデーションの中に輝く太陽の写真。荒んだ目をしている私がこの写真を撮ることは到底出来ないだろう。
写真に見惚れていると先輩が「綺麗ならよかった。それでどうする?無理にとは言わないけど……」と少し悲しそうな、嬉しそうな顔で言った。
「仮入部なら……まぁ……良いですかね……」と私はポツリと呟いた。
先輩は嬉しそうな笑みを浮かべて「え、!?本当!?やった!ありがとう」と子供のように無邪気に喜んだ。