20**年7月10日 雑談配信のアーカイブ

 これが最後かもしれない配信、今宵も王月葬の生前葬始まります。

 お久しぶりです、王月葬です。
 しばらく配信が出来ませんでした。心配の声を多くいただいていた中、コメントを出すこともできずに申し訳ございません。ああ、ありがとうございます。お久しぶりです。ふふ、覚えていますよ。
 体調……ええ、そうですね。体調も悪く、少しリアルが立て込んでおりました。こうしてまた皆さんと生前葬を迎えることが出来、とても嬉しいです。

 さて。
 今宵も、生前葬に足を運んでくださってありがとう。本格的な夏が近づいてくると、憂鬱になってきますね。私はもちろん夏が嫌いですし、みなさんもきっと、そうですよね? ふふ。

 コメントを見ていますと、『夏は嫌い』『家から出ないから関係ない』なんて声もありますね。ふふ、わかりますよ。私も夏は嫌いですが、結局家から出ないのにずっと涼しい冷房にあたっています。夏は涼しい部屋であつあつのうどん、これに尽きますね。
 あら、共感してくださってる人もいますね。

 さて、今日は最近SNSや噂話で話題になっている「例の出来事」についてお話ししたいと思います。
 そう、皆さんのコメントにもありますね。「黒煉村の事件」「千璃ぬる」……ふふ、やっぱり興味津々ですね。都市伝説好きの皆さんなら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
 というか、私のリスナーならもちろんご存じですよね。

(静かなオルゴールの音色が背景に流れ出す)

 「聴いたら死ぬ催眠音声」。
 あの話題が再燃するなんて、思いませんでしたよね? 事件の真相やその影響については、私も詳しいことはわかりません。ただ、あの出来事をきっかけに、今またネットの深い場所で妙な噂がささやかれているんです。
 覚えている方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
 4月に私の雑談枠で、知られていない都市伝説として「聴いたら死ぬ催眠音声」について取り上げさせていただきました。あら、『聞いてたよ~』というコメント、ありがとうございます。

 ええ、ええ、例の「きりや」というオカルトライターも、私のリスナーだったようです。ありがたいことですね。確認してみると、お休みをいただいている間に、彼から「このネタを使っていいか」という相談の連絡がきちんと届いていました。
 残念ながら、私がそのメッセージを見たのは彼があんなことになったあとですが。

 え?「きりや」自体存在していないかもしれない……、ですか。
 そんな説があるんですね。
 いえいえ、そんなことはありませんよ。きりやさんはきちんと実在する方です。
 私は知っていますよ。

 ああ、ごめんなさい。こんなに話をしても、何のことなのかよくわからない方もいますよね。
 申し訳ありません、久々の配信で私もはしゃいでしまったようです。

 今宵は「聴いたら死ぬ催眠音声」と、その音声をめぐる騒動について、私がまとめて語る。
 そんな夜にしようと思います。

(音楽が少し不穏なものに変わる)

 本題に入る前に、少し失礼して喉を潤わせていただきますね。
 え? なにを飲んでいるか、ですか?
 もちろん、これですよ。ふふ、『なまりんミルク』です。

 そうです、黒煉村の名産品の「なまり梅」を使ったドリンクです。
 私はこれが昔から大好きなんです。
 因縁のある黒煉村の特産品が私の好きな飲み物なんて――すごい偶然ですね?
 ふふ。

 さあ、それでは参りましょう。

 「聴いたら死ぬ催眠音声って、知ってる?」

(音楽が静かにフェードアウトし、何かの呼吸音が聞こえてくる。誰かがあなたのすぐ後ろで息を吸ったり吐いたりして――そして、囁き。次第に声が混じってくる。「聴いて」「もっと」「最後まで」)