いつのまにか、朝一に吐く息が白くなった。
肌を撫でる風もつんと冷たくて、今年もこの季節がやってきたのだと実感する。
十二月に入って、日本中が一気にクリスマスモードになった。
ここ京都も例外ではなく、JR京都駅の構内では煌びやかなイルミネーションが始まっている。巨大なクリスマスツリーも飾られ、そこを訪れた人々がささやかな歓声を上げる。
街中を歩いていても、あちこちのお店でサンタやトナカイの飾り付けが目立った。その周辺では綺麗にラッピングされたプレゼントの箱が光沢を放っている。
(私も、猫神様に何かプレゼントしたいなぁ)
首元に巻いた白いストールに触れながら、私はほうっと息を吐いた。
クリスマス当日まであと少し。明日には高校も終業式を迎える。
猫神様に何かを贈るなら、そろそろ用意しておかなければならない。
(でも、猫神様の欲しいものってなんだろう?)
彼の穏やかな笑みを思い浮かべながら、私は四条大橋に差し掛かった。
京都屈指の繁華街、四条通。
その途中、鴨川に架かるこの橋は今日も観光客でいっぱいだ。
日暮れ前のそこは心なしか、いつもよりカップルの数が多いような気がする。
まあ、そういう時期だもんね——なんて他人事として眺めていると、急にふわっと足に柔らかいものが当たる感触があった。
「えっ?」
思わず立ち止まって、足元に目を落とす。
するとそこには、何やら丸い物体があった。
三色の柄を持った、ふわふわの毛玉。
白、黒、茶の体毛を持つ、おそらくは小さな獣。
「……三毛猫ちゃん?」
私がそっと呼びかけると、その子は私の足元からこちらを見上げて「なぁん」と一声鳴いた。
三毛猫だった。
この辺りでは見かけない、丸々ぽてっとした体の子。
やけに人慣れしていて、細い尻尾をぴんと立てながら、その子は私の足にすりすりと頬を擦り付けてくる。
「かっ……かわいい」
思わず、心の声が漏れた。
ただでさえ猫は可愛いのに、こんなにくっついてくるなんて反則だ。
さらには抱っこをねだるように、その子は私の脛に前足の肉球を押し付けてこちらを見上げてくる。
「どうしたの。抱っこしてほしいの?」
もしかしたら飼い猫かもしれない。
私はその子をそっと両手で抱き上げ、丸々としたお尻の下に腕を回した。
こうして抱っこしても全く逃げる素振りはない。
やっぱりどこかの家から逃げてきちゃったのかも。
「よしよし。あなた、どこから来たの?」
お尻を支えたまま、反対の手で頭を撫でてあげると、ゴロゴロと喉を鳴らし始める。
あまりにも警戒心がないその様子に、私はくすりと笑ってしまった。
どうやら迷い猫を拾ってしまったらしい。
さてどうしようか——と頭を巡らせていると、
「おい! そこのお前!」
道の先から、鋭い声が飛んできた。
反射的に顔を上げると、多くの人が行き交う橋の真ん中で、一際目立つ格好の人物がいた。
黒の直垂衣装に、緩くウェーブした栗色の髪。と、そこから垂れ下がるもふもふの耳。
どう見ても人間ではないその青年の姿に、私は見覚えがあった。
「あれ……。犬神様?」



