禁断の村―祓嘗祭の闇―
『月刊オカルトX』2017年8月号特集
取材・編集部
※この記事で紹介する内容は、インターネット上の情報を独自に取材・編集したものです。
※実在の人物・団体とは一切関係ありません。
1.山奥に潜む異界
山深い峡谷の向こうに、夜霧に沈む一つの村がある。インターネット上で「N村」と呼ばれるその場所では、4年に一度、人知れず異様な儀式が執り行われているという。赤い祭服に身を包んだ村人たち、闇を震わす太鼓の音、そして誰も語ることのない「祓嘗祭」の真相――。本誌は徹底取材により、この禁断の村の謎に迫る。
2.幾重にも重なる謎
「夜中になると、山の奥から太鼓の音が聞こえてくるんです。でも、そこには誰も住んでいないはずなのに…」
昨年、本誌に寄せられた一通の投書から、私たちの取材は始まった。差出人は記載がなく、消印も判読できないほど薄れていた。しかし、その内容があまりにも不可解だったため、編集部は調査を開始することを決定した。
調べを進めると、同様の体験談がインターネット上に数多く存在することが判明した。太鼓の音、赤い祭服の人々、そして古びた祠。これらのキーワードは、異様なほど多くの証言に共通して登場する。そして最も不気味なことに、それらの目撃情報は9月という特定の時期に集中しているのだ。
一見、単なるネット上の怪談のように思えるこれらの情報。しかし、その背後には、私たちの想像を超える何かが潜んでいるのではないか。編集部は、さらなる調査を進めることにした。
3.4年目の異変
N村に関する情報を追っていく中で、私たちは一つの重要な発見をした。それは「4年」という周期の存在だ。
あるブログには、こんな記述が残されていた。
「村は4年に一度、様相が一変する。普段は静まり返っている場所なのに、その時期になると…」
残念ながら、この記事を最後まで読むことはできなかった。現在、このブログは削除され、痕跡を辿ることも不可能である。
さらに調査を進める中で、某匿名掲示板にはこんな不気味な書き込みも発見された。
別の掲示板には、さらに不気味な書き込みが見つかった。
「4年に一度、誰かが村に招かれる。そして必ず、誰かが消える」
これらの情報は単なる偶然なのか、それとも何か重大な意味を持つものなのか。私たちは、さらに深い闇へと足を踏み入れることになる。
4.闇に潜む痕跡
特に衝撃的なのは、新進気鋭の山岳写真家K氏が最後に遺したとされる作品群である。
山岳写真コンテストへの応募作品として撮影された一連の写真には、霧に包まれた祠と、その周囲を取り巻く不自然な赤い光の帯が写り込んでいたという。K氏は「決定的な一枚を撮る」と言い残し、暗がりへと向かったまま消息を絶った。その後、彼の姿を見た者はいない。
後に、この赤い光の帯を編集したところ、祠の前に集まる複数の人影が浮かび上がったとされる。編集部でもこれらの写真を入手しようと試みたが、元データはすべて散逸しており、確認することは叶わなかった。ただ、わずかに残された低解像度のコピーを見る限りでは、確かに人影のようにも見えるものがぼんやりと浮かび上がっていた。
編集部が専門家に解析を依頼したところ、「その形状は人影のように見えなくもないが、低解像度のため詳細を特定するのは難しい」との見解が示された。果たしてこれが事実なのか、それともただの錯覚なのか――謎は深まるばかりである。
5. 封印された祭祀
N村の存在を追う私たちの前に、さらに不可解な情報が浮かび上がってきた。それは「祓嘗祭」と呼ばれる謎の儀式についてだ。
「深夜、祭りのような音が響き始めた。祠の周りには赤い影が…」
「村全体が、まるで生き物のように息づいていた」
「誰かが笑っているような、泣いているような、そんな声が…」
これらの目撃証言は、ある種の祭祀の存在を示唆している。しかし、民俗学の研究者たちは、この種の儀式について「記録が存在しない」と口を揃える。まるで、誰かが意図的に情報を封印しているかのようだ。
そして最も不気味なのは、これらの証言者たちの多くが、その後、奇妙な運命を辿っているという事実である。ある者は突然の失踪、またある者は原因不明の事故。私たちが接触を試みた証言者の大半は、既に「存在しない」のだ。
6.読者への警鐘
私たちの取材は、思いもよらない結論へと導かれることとなった。それは「警告」という形を取らざるを得ない。以下に記す情報は、あなたの身を守るために必要不可欠なものだ。
N村には、ある種の「特徴」が存在する。山深い場所に位置し、携帯電話の電波は届かない。古びた祠の周囲には判読できない文字が刻まれた石碑が点在し、村への入り口には朽ちかけた立入禁止の看板が立つ。必ず川沿いの道を通らねばならず、最寄りの駅からは2時間以上を要する。
しかし、本当に恐ろしいのはその先にある。
夜になると遠くから太鼓の音が聞こえ始める。それは次第に大きくなり、赤い装束の人影が見え隠れするようになる。写真には、そこにいるはずのない者たちの姿が写り込む――。私たちの取材中にも、この「前兆」のいくつかを経験することとなった。
7.8月の禁忌
取材の過程で、私たちは一つの重大な事実に突き当たった。それは8月という時期の特異性である。しかし、その8月は現在のカレンダーというわけではないらしい。つまり旧暦である。新暦では、9月となる時期にかけて、この地域では古くから様々な言い伝えが存在する。
「8月最初の仏滅の日には、山に入ってはならない」
「赤い着物を着た人を見たら、決して声をかけてはいけない」
「太鼓の音が聞こえたら、すぐにその場を立ち去るべし」
これらの言い伝えは、単なる迷信として片付けることはできない。なぜなら、これらの禁忌を破った者たちの多くが、文字通り「消えて」しまっているからだ。
8.エピローグ 闇の誘い
本誌では、N村の具体的な場所を明かすことはできない。それは読者の安全を考慮してのことだ。しかし、もしあなたが山中で不可解な経験をしたなら、それはすでにN村の「圏域」に踏み込んでいる可能性がある。
取材の終盤、私たちの下に一通の手紙が届いた。差出人不明。中には一枚の古びた写真が入っていた。霞んだ画面に写る祠と、その前に立つ赤い装束の人々。そして、驚くべきことにその影には…。
しかし、この写真について語ることは控えよう。なぜなら、それを見た者の多くが、ある種の「誘い」を感じ始めるからだ。
ただし、これだけは言っておかねばならない。
もし、あなたが深い山中で太鼓の音を聞いたなら――。
もし、赤い着物の群れを目にしたなら――。
そして何より、もし誰かに「村」への案内を持ちかけられたなら――。
迷うことなく、その場を去ることを強く推奨する。
なぜなら、次に消えるのは、あなたかもしれないのだから。
[編集部付記]
※本誌では引き続き、N村に関する情報提供を受け付けておりますが、現地への訪問は絶対におやめください。
【次号予告】
『廃村に棲む者たち』――日本各地に残る封印された集落の真実



