女の子が泣きそうな声で呟く。
真由がライターを点火する……が、火がつかない。

水に濡れてしまっているからだ。
慌てて手のひらでライターの水気を拭う。

そしてまた点火する。
シュッシュッと虚しい音が聞こえるばかりで、あの暖かな火はつかない。

「ほら、やっぱり火なんてないじゃないか！」
男の子の怒号が聞こえてきて振り向くと、子供たちが真由の後ろに近づいてきていた。

その顔はどれも目が釣り上がり、怒りで満ちている。
自分たちの期待を裏切った大人への憎しみが滲み出している。

真由はターゲットは大翔から自分へ変わったことを悟った。
ここで火をつけることができなければ、食べられる。

「今、火をつけるから……！」
すぐに枯れ葉へと向き直り、ライターと格闘する。