まだ嘔吐感の残る体を無理やり持ち上げて走り出す。
けれどすぐに足がもつれてその場に倒れ込んでしまった。

「お姉ちゃん大丈夫? そんなんで逃げ切れる?」
後ろから子どもたちの楽しげな声が聞こえてくる。

でも振り向いている暇はなかった。
少しでもこの子たちとの距離を保たないといけない。

立ち上がると膝小僧がすりむけて血が出ていた。
こんなケガをするなんて子供の頃以来だ。

流れ出る血をそのままにまた一歩前に踏み出したときだった、行く手を阻むように男の子が立ちはだかった。

「へへっ。お姉ちゃんも美味しそうな匂いがするね」
クンクンと鼻をひくつかせてかいでいるのは真由の膝から流れている血の匂いだった。

彼らは野生動物のように血の匂いに敏感だった。