女の子の母親は我が子の手を握りしめて子どもたちがいる対岸へとやってきたのだ。
そこには火を燃やして魚を食べたあとがあり、母親は目に涙をにじませた。

『ほんの少しだけど食べ物を持ってきたからね』
カゴの中にはダイコンやハクサイが入れられていて、それらは日持ちするように加工されていた。

『お母ちゃん、おうちに帰りたいよぉ』
泣いてすがりつく女の子の頭を優しくなでて『それはできないの』と、悲痛な声を漏らす。

『どうして? 連れて帰ってくれないの?』
泣きそうな我が子を目の前にしても左右に首をふるばかり。

それを見ていた男の子はすべてを察して急速に心が冷えていくのを感じていた。
薄々気がついてはいた。

こんな場所に取り残されたときから、自分たちは大人たちに捨てられたのだと。
だけど信じたくなくていつか迎えに来てくれると自分に言い聞かせていただけなんだ。

男の子は自分で作った石の武器を手に持った。