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山に置き去りにされた5人の子供たちはどうにか繋がれたロープを外して大人たちが戻るのを待っていた。

だけど、日が暮れて朝が来ても誰も来てくれない。
それどころか夜になると大雨が振り始めて川が氾濫し、周囲は水浸しになっていた。

これじゃ川を渡って帰ることもできない。
『ねぇ、お腹へったよぉ』
途中でこけてケガをした女の子が泣きそうな声で呟いた。

それを引き金にしたかのように次から次へと空腹や寒さを訴える声が聞こえてくる。

『よし、それならここで魚を釣ろう。それを焼いて食べるんだ。誰か石で火を起こせるヤツはいるか?』

10歳の少年が立ち上がり、みんなの指揮をとりはじめた。

貧しい村での生活では家の手伝いが必須となっていた子供たちは、必要なものをすぐに集め始めた。

石、小枝、釣り竿用の木の枝に乾燥した葉っぱ。
それらは子どもたちの命をつなぐために大切なものだった。