「助けて……」
泰河が玲央奈へと右手を伸ばす。

しかし玲央奈は怯えた様子でそれを振り払ったのだ。
一瞬、泰河の顔に絶望の色が浮かんできた。

裏切られた。
自分は玲央奈を助けたのに、玲央奈は自分を裏切った。

そんな黒い感情が湧き上がってくると同時に、上に乗っている子供が刃物を振り上げた。

「玲央奈は大学の教授と付き合ってる」
泰河がかすれた声で呟いた。

玲央奈が大きく目を見開いて動きをとめた。
同時に、刃物を振り上げていた子供の視線が泰河から玲央奈へと移動する。

「教授から金をもらって付き合ってるんだ。最低な女だろ」
泰河がなにもかもどうでもいいというように笑いながら話す。

子供が泰河の上から離れて玲央奈へと向き直った。