「これくらいどうってことないよ。ちょっと荷物が多いだけ」

自分の荷物に加えて真由の荷物まで持っているから、大翔はずっと前かがみになってここまで歩いてきた。

それでも彼女の前でヘタレな姿は見せられないと、泣き言は伏せていた。

なにより、自分よりももっと大きな荷物を抱えている泰河が平然とした顔でテントを立て始めているのだから、文句なんて言いようもない。

キャンプ経験のある男ふたりにかかればあっという間にテントがたち、その近くにコンロが設置された。

本当は焚き火をしたかったけれど、もしものことがあったら楽しい夏休みが台無しになると玲央奈に言われて渋々諦めていた。

そのコンロの上では鍋に入れられた水がグツグツと沸騰し始めていた。
「そろそろいいかも」

熱くなりすぎないタイミングで真由がコンロの火を止め、みんなのカップにお湯を注いでいく。
カップの中には予め粉末のコーヒーが入れられていた。