川の中を歩いて対岸へと渡ると木々の向こうに小さな集落が見えた。
どの家も小さく、山の中にあるもので作った簡易的なものばかりだ。

小屋呼ぶにも抵抗があるその建物は10件ほどあり、とても中に入れそうにない。
入ればすぐに崩れてきてしまうだろう。

「村っていうか、山小屋みたいなものなのかな」
見渡せるくらい小さな集落を一周して真由はつぶやいた。

「そうかもしれないな。昔はここで植林でもしてたのかも。だけど職人がいなくなって、休憩小屋だけ放置されたんだろうな」

大翔がそう言って近くの小屋の入り口に手をかけた。
引き戸を開けてみると中は地面の土がむき出しになっており、ひと間しかない空間だった。

建物の中央には火を燃やした跡が残っていて、窓はない。
休憩小屋してもあまりに簡素な作りだ。

雨風だけしのぐことができればそれで良かったんだろうか。
不思議に感じていたそのときだった。