「お、俺と、付き合ってください。」

私は人生初の告白をされた。名前すら知らない、黒髪でセンター分けをした、高身長の男の子。

すれ違っていただけなら、一目惚れしていたかもしれない。

でも…今の感情はそれとは違ったんだ。

「ごめん、なさい。」

震えた声でこの6文字を発する。
ふと、視線を彼の顔にやると、じっと私の方を見てセンター分けの髪を風になびかせていた。

「そ、そうですよね。俺が、釣り合う分けないっすもんね。」
「でも、さ。インスタ繋ご。私嬉しかったよ。まずは、友達から始めませんか?」

いつもの私ならいつもの私なら絶対に出なかった言葉が、なぜかスラスラと出てきた。
彼は真剣だった顔にシワを作って、笑った。

「ありがとうございます、!」
ずっとその場から離れない彼を見て、「どうかした?」そう、声をかけた。

「あの、振った理由って教えてもらうことできますか?」
「いいよ。」
「…っ！」
「あのね、」
と私は彼に向かって言葉を続けた。
「まず、なまえをしらないこと。私自身があなたの性格を知らない限り、好きにはなれない。あとは、私の何を知っているのかわからないこと。」

「それって、どういうことですか、？」
「そうだな。私の特技と、苦手なものってわかる？」

「わから、ないです。」
「私は、相手に自分を知ってもらってから付き合いたいな。」
表情を緩めながらそう言うと、
「わかりました。もっと知れるように頑張ります！」
そういって、彼はこの場を去った。
その５分後くらいに、」DMが届いた。

「今日はありがとうございました！もっと愛花さんのこと知れるように話してくれると嬉しいです。」

私は微笑みながら、「是非」そう返した。



これがだいたい、５年前の話。
さて私たちはというと、明日、籍を入れる｡
｢愛花。今日は最後のカップルの日ってことで、デート行かなーい？｣
「どんな日だって行くよ。」
「ありがと。あ、でも、本番は明日だから、ぜいたくはできねぇな。」
「そうだね」