最後まで好きでいたかった

その日は雨だった。

ただの雨じゃない。
激しい雷がなり、雨は土砂降りで、交通機関が大幅に遅延するくらいの雨。

そしてこの日は誕生日。10月4日。彼氏の。
もともとは彼を家に招待する予定だった。
そこでいろんなサプライズをするはずだった。

でも出来なかった。

延期。その手もあったが予約したケーキやらなんやらの再予約をするなんて、学生の私にはできなかった。

だから、せめて、声は聴きたかった。

電話したんだ。

つながった後は雷や雨の音が異常なほどにスマホを通じて伝わってきた。

なんでだろう。
そう思ったら、彼が口を開いた。

「多分、13時くらいには着くから!!まってて!」

私は一瞬理解できなかった。
「なんで、?」思わず声に出た一言に彼はこう答えた。

「俺さ、嫌だったんだ。雨なんかに予定つぶされるの。しかも彼女との。そりゃ、そうでしょ。」

こういうのは「特に理由はないけど…」ってかっこつけていうのがお決まりだが。それはしなかった。

今は11時。

どうせ来ないと思っていたから何も準備していない・
「ありがとう、待ってるね。」
「楽しみにしてるね!」
この声を聴いて静かに通話を切った。
雨も結構収まっていて、家を出て、近くにあるケーキ屋へ、予約していたケーキを取りに行った。
家に戻ってきて、一つ一つ、風船を膨らませていく。

12時30分。
「もうすぐ着く」
その連絡が届いてから、玄関前でクラッカーを持ったままずっと待ち続けた。

インターホンの音が家に鳴り響く。
私は「入っていいよ」とメッセージを送る。
ドアがひらく。
クラッカーのひもをぐっと引く。
はじける音とともに彼が入ってくる。

「誕生日おめでとう!」

私は殺された。