雫「た、単刀直入に問おう。なぜ私の名を知っている?」

??「あれ?僕のこと忘れちゃいましたか…?」

雫「忘れるも何も初対面のはずだが。」

いきなり何を言い出すかと思えば、私の名を言ってくるし、さらには“僕のことを忘れたのか”だと?
朝っぱらから訳がわからんっ!

??「ん?暁斗さんに悠人さんじゃないですか。お久しぶりですね。」

なんと。
父上と兄上のことまで知っているぞ、この男…!

暁斗「…………あーーーーーっ!!」

悠人「き、急に叫んでどうしたの、!?びっくりしたぁ…!」

暁斗「キミ、望月(もちづき) 奏斗(かなと)くんだよねっ!?」

雫「望月、奏斗…?」

奏斗「暁斗さんっ、覚えてくれてたんですね…っ!良かった〜、誰も僕のことを覚えていないかもって不安だったんです。」

暁斗「そりゃあ覚えてるよ!なんせ俺は4家の代表だからねっ!」

雫「おいおい、父上!そのことを言って平気なのか!?一般人にそのことを言うのは、危ないのではないか…っ!?」

暁斗「雫、覚えてない?俺らと同じように、望月家の次期当主の子だよ。ほら、何回か会ってるじゃん。」

雫「望月家の次期当主…?」


-回想シーン-

雫『ふわぁ…っ。』

……眠い!!
こういう会議の時の父上は話が長いんだよなァ…。
まあ、普段のふにゃふにゃな父上よりはかっこいいが。

暁斗『よし、長時間申し訳なかったね。これで今回の会議は終わりにするよ。もう12月も終盤だから、風邪に気をつけてね。』

雫『んん〜っ、やっと終わった…っ!!』

暁斗『あ、雫〜!今日はみんな泊まるから、布団用意できる?あと、お茶はあるから、この前買った和菓子も持ってきてー!』

雫『なぜ私なんだ…?まあ良いが…。』

もしや、途中で寝そうになっていたのがバレていたのか…!?
…そういえば、寝る前に忍者の修行をやるよな?
その前の時間で何をしようか。
修行で見れなかった分の大河ドラマを見るか…。
だが…この間、榊原先生のご新刊が発売されたよな。
それもすごく読みたい…ッ!!
ぐぬぅ…!!!!

“ドンッ”

雫『うわぁっ!?も、申し訳ありませぬ!』

奏斗『いえ、大丈夫です…って雫さん?』

雫『ああ、奏斗くんか、すまない。修行前の空き時間で何をしようか考えていたのだ。』

奏斗『そうだったんですか。
それで…何をするのか決まったんですか?』

雫『いや、それが悩んでいるのだ。大河ドラマを見るのもいいし、ご新刊を読むのも捨てがたい…。奏斗くんはどちらが良いと思うかね?』

奏斗『あ、ちょうど僕も参考書を読むところでしたし、良ければ一緒に読書会のようなものでもしませんか?』

雫『まことかっ!?私で良いのであれば、是非とも共に読書を楽しもう!!』

奏斗『…!わかりました。じゃあ、修行前に僕が泊まらせていただく部屋に来てください。』

雫『うむ!承知したぞっ!!』





雫「あの時のか…!たしか去年、一緒に読書をしたよな?」

奏斗「はい。思い出してくれましたか?」

雫「うむ、はっきりと思い出したぞ。忘れてしまってすまないな。」

悠人「あれ?望月家ってさぁ、風魔家の分家だよね?」

奏斗「はい。僕の先祖が昔、風魔家から分かれてそこから望月の姓を名乗っています。」

悠人「ご先祖さんも何を考えて風魔家から分かれたんだろうねぇ〜?」

雫「たしかに謎だな。特に史料が残っているわけでもあるまいし。」

暁斗「ねぇ、奏斗くんって雫と小学校同じだよねっ?」

奏斗「そうですね。4年間くらい同じクラスだったかと。」

雫「そういえばそうだな。3年生〜6年生の間同じクラス、だったよな…?」

奏斗「はい。覚えてたんですか?ってことは、もしかして昔の僕も…。」

雫「ん?なんだ、それは。だが…小学生の頃、途中でくちょ…わっぷ。」

奏斗「雫さん、ストップです。2人には聞かれたくないので。」

雫「おっと、そうだったか。すまない。」

暁斗&悠人「「……??」」

“ピンポンパンポーン”

校長『えー理事長、理事長。
ご子息たちとお話するのは良いですが、仕事放棄しないでくださーい!!早く理事長室まで来てくださいねー!!
繰り返します。──・・・・・・』

暁斗「うげっ、校長先生に呼ばれちゃったぁ〜!行きたくないよぉ、3人とも助けてぇ…。」

3人“ポンッ”

雫「父上よ。」

悠人「父さん。」

奏斗「暁斗さん。」

雫&悠人&奏斗「「「行け(きましょう)。」」」

暁斗「さ、3人ともぉ…(⁠´⁠;⁠ω⁠;⁠`⁠)」

はぁ…全く。
うちの理事長はどれだけ仕事嫌いなんだ?
代表の仕事は進んでやるくせに。
意味がわからんなァ。
それに、だんだん校長が父上の世話係になってきていないか…?

校長「あっ、理事長!すぐ来なかったので探しに来ましたよ!!って、転校生の生徒もいらっしゃったんですか!?もしかして、風魔さんたちとお知り合いで?」

奏斗「はい、そうなんです。実は、僕たち親戚でして…。」

校長「そうだったんですか!じゃあ、雫さんと同じクラスにした方がいいですかね?この時期に転校してくるのは珍しいですし、新しいクラスに馴染むためにも知っている生徒が一緒にいた方が気が楽ですもんね。うん、そうしましょう!」

雫「…校長先生。誰の意見も聞かずに、ご自身できめてらっしゃいませんか。」

校長「たしかに言われてみれば!!理事長、どうですか?望月さんを雫さんと同じクラスにするのは!」

暁斗「ふぇ、なんで僕に聞くんですかぁ…?そうですね…………。で、でもその方が奏斗くんもクラスに馴染めs…」

校長「ですよね!では決まりですね!!」

暁斗「えぇ…俺、最後まで言ってないんだけど?」

あまりに校長の判断が早すぎて、父上も素が出てしまっている…。
というか、父上の意見がどちらにせよ、校長は奏斗くんを私と同じクラスにするつもりだったのだろう。
うむ、うちの学園の教師…いいや、校長先生は理事長以上の権力を持っていそうだな、ハハハ。
本来ならば、理事長である父上の方が権力は強いはずだがなァ……。

校長「よし!では理事長!!仕事に戻りましょう!行きますよっ。」

暁斗「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」

悠人「あはは、嵐のように現れて、嵐のように去っていったねぇ〜。」

雫「だな。」

奏斗「2人とも、暁斗さんの最後の叫びには何も触れないんですか…?」

雫「いつも見ている光景だからな。」

悠人「うん。いつも俺たちと喋ってて、校長先生に呼ばれて連れてかれるって流れだからね〜。毎朝校長先生に会ってるおかげで仲良くなっちゃったよ、あははっ。」

奏斗「そうなんですね…。あれが日常茶飯事なんですか。」

雫「うむ、賑やかだが面倒だ。特に、毎朝父上を起こすことが。」

悠人「あ、そういえばさ。今日もおはようとか言ってたけど、絶対起きてなかったよね?」

雫「ああ。あの時は布団の取り合い中だった。故に、父上がおはようと言った時は腹パンでもかまそうかという考えが脳裏を横切ったな。」

悠人「やっぱり起きてなかったか…。まあ、父さんが起きれるわけないとは思ってたけど。」

雫「いかにも。風魔家で1番朝に弱い人間だからな、父上は。」

“ダダダダダ…ッ”

雫「…ぬ?なんだ、この音は。」

奏斗「音ですか…?」

悠人「何も聞こえないけどなぁ…?」