今日はクリスマス。

「よし、できた。子鬼ちゃん、そっちのお星様持ってきてくれる? 後は好きに飾りつけしていいからね」

 キッチンでカップケーキを焼いていた柚子は、できたカップケーキの上にクリームを絞ると、子鬼たちへお願いする。

「あーい」
「あいあい」

 元気よく返事をした子鬼は星形の砂糖菓子をそれぞれ持ち、そっとクリームの上に乗せる。
 それからは、チョコレートやサンタのピックなどで思い思いに飾りつけてカップケーキを完成させた。

「あいあーい!」
「や~!」

 嬉しそうにぴょんぴょんと跳びはねる子鬼たちの姿にほっこりとした気持ちになる柚子は、そろりそろりと近づいてカップケーキにかぶりつこうとした龍をべしりと叩き落とした。

『ぶへっ』
「油断も隙もない」

 じとっとした眼差しを向ける柚子に、龍も抗議をする。

『なにをするのだ!』
「子鬼ちゃんのケーキを狙うからでしょう。これは子鬼ちゃんが頑張って作った分なんだから食べちゃ駄目」
『少しぐらいいいではないか!』
「あなたのはこっち」

 柚子が差し出したのは、失敗して形が歪なものだ。
 しかし、見た目が悪いだけで味は同じである。

 しかし、それでも龍は不満らしい。
 物欲しそうに子鬼が一生懸命ラッピングしているカップケーキを見ている。

 呆れる柚子は、しかたないと玲夜のためにとっていた綺麗な形のカップケーキをささっと飾りつけして龍に渡す。

「これでいい?」

 途端に目を輝かせた龍はさらなる要求をする。

『童たちのもののように綺麗に包んでくれ!』
「包んでもすぐ食べるんでしょう?」

 ラッピングなど必要ないだろうに。

『開ける楽しみがあるではないか』
「はいはい」

 我が儘な龍にやれやれと思いながらも、今日はクリスマス。
 少しぐらいは聞いてあげるべきかと、透明な袋に入れた上で赤いリボンで飾ってあげた。

「どう?」
『さすが柚子だ!』

 どうやらお気に召したようで、満足そうな顔をしている。

『むふふふ。あやつらにも自慢してこよう』

 そう言ってキッチンから出ていった。
 少しして、ドタドタ走る音と、まろとみるくの怒ったような鳴き声、そして龍の悲鳴が聞こえてきたが柚子は無視した。

「子鬼ちゃん、できた?」
「あい!」
「あい!」

 子鬼たちは自らが飾りつけたカップケーキを大事そうに抱えている。

 これは日頃からお世話になっている人へクリスマスプレゼントを贈りたいと、子鬼たちから言い出したことだった。

「きっと喜んでくれるよね」

 喜びすぎて卒倒しないかが心配である。

「じゃあ、渡しに行こっか」
「あい!」
「あいあい!」



 そして子鬼たちはそれぞれカップケーキを持って、いつもお世話になるあなたへ向けにぱっと笑った。


「いつもありがと」
「メリークリスマス」