あたしの彼氏は幽体離脱ができる。
なんなら、初めて会った彼が幽体離脱な彼だった。
高校一年の夏休み。補習で出会った彼のことを好きになった。でも途中で彼はこの世のものじゃないと悟った。あたしは彼ーー秋山翔太を幽霊だと思い、泣いていたのに。
幽体離脱して補習を受けていたという生きている人間だった。
「葉山、冬休みってなんか用事ある?」
紅葉が色づいてきたある日、夕暮れの教室で秋山にそう尋ねられた。
来た! あたしはそう思った。
付き合って初めてのクリスマス。一緒に過ごすに決まってる! そう思ってもちろんクリスマスは二十三日から二十五日までばっちりと空けてある。いつでもどんと来いだ。あたしは身を乗り出し気味に叫んだ。
「もちろんないよ!」
「どこ行く!?」と言いかけたあたしに被せて、秋山は「そうか」と真面目そうにうんうんと頷いた。
「俺もだよ」
そこで話は終わった。
え? その次は? その次こそ大事なのでは?
しかし待てどもその次のお誘いの言葉は出てこなかった。それどころか「クリスマスあたりに、ぴんきーの第三期発表あるかもな」と深夜アニメの話になっていた。
あたしは息を吸い込んだ。
「秋山! イブの日、遊園地行こ!」
誘われるのを待っているなんてあたしらしくないぜ! 用事がないならきっと秋山は付き合ってくれるはず。
と思ったのだが。
「あ、ごめん。二十四日はこっちいないんだ」
「え? だってさっき用事ないって言ってたじゃん」
すると秋山は残念そうに眉を寄せた。
「うん、俺は用事はないんだ。ただ母さんが実家の法事に行くのについてくことになってて」
「それ、用事あるって言うんだよ!?」
あたしはがっくりと肩を落とした。が、初めてのクリスマス。めげるわけにはいかない。だって彼は幽体離脱できるから。
「じゃあさ、法事は特にやることないなら本体は実家に置いといてさ! 幽体離脱して遊びに行こうよ!」
すると秋山は「なるほど、いい考えだな」と感心したように呟いた。
なんなら、初めて会った彼が幽体離脱な彼だった。
高校一年の夏休み。補習で出会った彼のことを好きになった。でも途中で彼はこの世のものじゃないと悟った。あたしは彼ーー秋山翔太を幽霊だと思い、泣いていたのに。
幽体離脱して補習を受けていたという生きている人間だった。
「葉山、冬休みってなんか用事ある?」
紅葉が色づいてきたある日、夕暮れの教室で秋山にそう尋ねられた。
来た! あたしはそう思った。
付き合って初めてのクリスマス。一緒に過ごすに決まってる! そう思ってもちろんクリスマスは二十三日から二十五日までばっちりと空けてある。いつでもどんと来いだ。あたしは身を乗り出し気味に叫んだ。
「もちろんないよ!」
「どこ行く!?」と言いかけたあたしに被せて、秋山は「そうか」と真面目そうにうんうんと頷いた。
「俺もだよ」
そこで話は終わった。
え? その次は? その次こそ大事なのでは?
しかし待てどもその次のお誘いの言葉は出てこなかった。それどころか「クリスマスあたりに、ぴんきーの第三期発表あるかもな」と深夜アニメの話になっていた。
あたしは息を吸い込んだ。
「秋山! イブの日、遊園地行こ!」
誘われるのを待っているなんてあたしらしくないぜ! 用事がないならきっと秋山は付き合ってくれるはず。
と思ったのだが。
「あ、ごめん。二十四日はこっちいないんだ」
「え? だってさっき用事ないって言ってたじゃん」
すると秋山は残念そうに眉を寄せた。
「うん、俺は用事はないんだ。ただ母さんが実家の法事に行くのについてくことになってて」
「それ、用事あるって言うんだよ!?」
あたしはがっくりと肩を落とした。が、初めてのクリスマス。めげるわけにはいかない。だって彼は幽体離脱できるから。
「じゃあさ、法事は特にやることないなら本体は実家に置いといてさ! 幽体離脱して遊びに行こうよ!」
すると秋山は「なるほど、いい考えだな」と感心したように呟いた。