日が沈む頃俺、白夜はカタカタパソコンを打って
風翠が来るのを待った。
コンコンコン。
部屋に軽くドアを叩く音が響いた。
「ど〜ぞー」
俺は返事をすると、すぐにドアがガチャリと開いた。
「白夜、話って?」
風翠が部屋へ入ってくる。
「零、少しだけモニター頼んでいい?」
零は小さく頷いた。
「ありがと。助かる」
「俺の部屋でいい?」
「うん」
白夜は零にモニターを任せ、風翠とともに部屋を出た。
廊下を歩き、風翠の部屋へ入る。
扉が閉まると、風翠は白夜へ視線を向けた。
「それで……? 話ってのは?」
「……」
白夜は、すぐには口を開かなかった。
少しだけ迷うように視線を落とす。
――遡ること、数分前。
ある人物から、一通のメールが届いた。
「誰だ……?」
白夜が画面を見つめると、零がキーボードを操作する。
画面には、
【開いて見たら?】
と表示された。
「うん……」
マウスをクリックする。
カチッ、と小さな音が響くと同時に、メッセージが開かれた。
そこには、こんな文章が書かれていた。
【月影の風楽です。急に送信してびっくりしたでしょう。少し風翠に伝えて欲しいことがあって連絡しました。単刀直入に言うと、父親と母親は生きてるよ。ってことを伝えてくれないかい? もちろん深い意味は無いよ。じゃぁよろしく頼んだ。】
白夜は、しばらく画面を見つめていた。
そして現在。
「なんか……風翠の親? 父親と母親が生きてるっていうのが、さっき月影から来たんだけど……」
言葉を選びながら、白夜は続ける。
「向こうは深い意味ないって言ってたけど……」
「……は、……?」
風翠の表情が固まった。
「嘘か本当かは不明だけどね」
「……」
風翠は俯いた。
先ほどまでの表情とは明らかに違う。
「……少し……一人にしてくれないか?」
「……分かった」
白夜はそれ以上何も言わず、風翠の部屋を出た。
扉を閉めたところで、ふと振り返る。
(顔色……悪くなってたな……)
少し考えたあと、白夜は右龍を呼ぶことにした。
(……一応、右龍呼んでみるか……)
白夜は右龍たちの部屋の前までやって来た。
コンコン。
軽くドアを叩く。
すると、中から左龍の声が聞こえた。
「誰ー?」
「白夜だけど、右龍いる?」
「右龍ー。白夜が呼んでる」
「わかったー」
ガチャッ……。
扉が開き、右龍が顔を出す。
「どうした?」
「その……風翠の顔色、悪くなっちゃって……」
「何かあったの?」
「それが……」
白夜は、先ほど風翠に伝えたことを含め、起こったことを順に話した。
右龍は黙って聞いていたが、話を聞き終えると小さく頷いた。
「なるほどね……。分かった。白夜は零のところ戻ってていいよ。任せて」
「ごめん……ありがと」
「気にすることないよ。笑 じゃ、行ってくる」
「うん……」
白夜は右龍の背中を見送った。
その姿が廊下の向こうへ消えていくのを確認してから、自室へと戻った。
右龍視点
(大丈夫かなぁ……)
風翠さんの部屋の前まで来ると、右龍は扉を三回ノックした。
コンコンコン。
「風翠さん……右龍です」
しかし、返事はない。
右龍は少しだけ間を置いて、もう一度声をかける。
「入っていいですか?」
「だ……め……」
小さな声が返ってきた。
「……汚くても大丈夫ですよ」
「……」
返事はない。
「失礼します」
右龍はそう言って、扉を開けた。
部屋の中へ入ると、風翠は俯いたまま動かなかった。
「風翠さん」
「……」
「白夜から多少聞いたんで、無理に話さなくても大丈夫ですよ」
しばらく沈黙が続いた。
そして――。
「うーちゃん……俺……」
風翠が、ぽつりと呟いた。
「……あの時、ちゃんと父親殺せてなかった」
右龍は驚いた様子を見せることなく、風翠の言葉を受け止める。
「そうだったんですね……」
少し考えてから、静かに続けた。
「もしかしたら、少し躊躇したのかもしれませね……」
「え……?」
「だって、風翠さん優しい人ですから……」
右龍は風翠を見る。
「もしかしたら、まだ愛されるかもって思ったのかもしれませんよ」
「俺は優しくなんかないよ……」
風翠の声が震える。
「生きてたら迷惑……ばっかりで……」
「そんなことないですよ」
「でも――」
「俺は!」
右龍の声が部屋に響いた。
「俺は……風翠さんがいなかったら、確実に死んでましたし……」
風翠が顔を上げる。
右龍はまっすぐ風翠を見つめていた。
「俺は風翠さんに救われたんですよ?」
その声は、いつもの穏やかなものだった。
けれど、その言葉には確かな強さがあった。
「だから……生きてたら迷惑なんて言わないでください。考えないでください」
そう。
あの日、風翠さんが来てくれなかったら。
出会えなかったら。
助けてくれなかったら――。
俺は。
俺と左龍は、確実に今、生きていないのだから。
風翠が来るのを待った。
コンコンコン。
部屋に軽くドアを叩く音が響いた。
「ど〜ぞー」
俺は返事をすると、すぐにドアがガチャリと開いた。
「白夜、話って?」
風翠が部屋へ入ってくる。
「零、少しだけモニター頼んでいい?」
零は小さく頷いた。
「ありがと。助かる」
「俺の部屋でいい?」
「うん」
白夜は零にモニターを任せ、風翠とともに部屋を出た。
廊下を歩き、風翠の部屋へ入る。
扉が閉まると、風翠は白夜へ視線を向けた。
「それで……? 話ってのは?」
「……」
白夜は、すぐには口を開かなかった。
少しだけ迷うように視線を落とす。
――遡ること、数分前。
ある人物から、一通のメールが届いた。
「誰だ……?」
白夜が画面を見つめると、零がキーボードを操作する。
画面には、
【開いて見たら?】
と表示された。
「うん……」
マウスをクリックする。
カチッ、と小さな音が響くと同時に、メッセージが開かれた。
そこには、こんな文章が書かれていた。
【月影の風楽です。急に送信してびっくりしたでしょう。少し風翠に伝えて欲しいことがあって連絡しました。単刀直入に言うと、父親と母親は生きてるよ。ってことを伝えてくれないかい? もちろん深い意味は無いよ。じゃぁよろしく頼んだ。】
白夜は、しばらく画面を見つめていた。
そして現在。
「なんか……風翠の親? 父親と母親が生きてるっていうのが、さっき月影から来たんだけど……」
言葉を選びながら、白夜は続ける。
「向こうは深い意味ないって言ってたけど……」
「……は、……?」
風翠の表情が固まった。
「嘘か本当かは不明だけどね」
「……」
風翠は俯いた。
先ほどまでの表情とは明らかに違う。
「……少し……一人にしてくれないか?」
「……分かった」
白夜はそれ以上何も言わず、風翠の部屋を出た。
扉を閉めたところで、ふと振り返る。
(顔色……悪くなってたな……)
少し考えたあと、白夜は右龍を呼ぶことにした。
(……一応、右龍呼んでみるか……)
白夜は右龍たちの部屋の前までやって来た。
コンコン。
軽くドアを叩く。
すると、中から左龍の声が聞こえた。
「誰ー?」
「白夜だけど、右龍いる?」
「右龍ー。白夜が呼んでる」
「わかったー」
ガチャッ……。
扉が開き、右龍が顔を出す。
「どうした?」
「その……風翠の顔色、悪くなっちゃって……」
「何かあったの?」
「それが……」
白夜は、先ほど風翠に伝えたことを含め、起こったことを順に話した。
右龍は黙って聞いていたが、話を聞き終えると小さく頷いた。
「なるほどね……。分かった。白夜は零のところ戻ってていいよ。任せて」
「ごめん……ありがと」
「気にすることないよ。笑 じゃ、行ってくる」
「うん……」
白夜は右龍の背中を見送った。
その姿が廊下の向こうへ消えていくのを確認してから、自室へと戻った。
右龍視点
(大丈夫かなぁ……)
風翠さんの部屋の前まで来ると、右龍は扉を三回ノックした。
コンコンコン。
「風翠さん……右龍です」
しかし、返事はない。
右龍は少しだけ間を置いて、もう一度声をかける。
「入っていいですか?」
「だ……め……」
小さな声が返ってきた。
「……汚くても大丈夫ですよ」
「……」
返事はない。
「失礼します」
右龍はそう言って、扉を開けた。
部屋の中へ入ると、風翠は俯いたまま動かなかった。
「風翠さん」
「……」
「白夜から多少聞いたんで、無理に話さなくても大丈夫ですよ」
しばらく沈黙が続いた。
そして――。
「うーちゃん……俺……」
風翠が、ぽつりと呟いた。
「……あの時、ちゃんと父親殺せてなかった」
右龍は驚いた様子を見せることなく、風翠の言葉を受け止める。
「そうだったんですね……」
少し考えてから、静かに続けた。
「もしかしたら、少し躊躇したのかもしれませね……」
「え……?」
「だって、風翠さん優しい人ですから……」
右龍は風翠を見る。
「もしかしたら、まだ愛されるかもって思ったのかもしれませんよ」
「俺は優しくなんかないよ……」
風翠の声が震える。
「生きてたら迷惑……ばっかりで……」
「そんなことないですよ」
「でも――」
「俺は!」
右龍の声が部屋に響いた。
「俺は……風翠さんがいなかったら、確実に死んでましたし……」
風翠が顔を上げる。
右龍はまっすぐ風翠を見つめていた。
「俺は風翠さんに救われたんですよ?」
その声は、いつもの穏やかなものだった。
けれど、その言葉には確かな強さがあった。
「だから……生きてたら迷惑なんて言わないでください。考えないでください」
そう。
あの日、風翠さんが来てくれなかったら。
出会えなかったら。
助けてくれなかったら――。
俺は。
俺と左龍は、確実に今、生きていないのだから。
