朽ちない薔薇は夜に舞う

「また零、寝落ちしてる……。もぉ、風邪引くよ〜……」

白夜は呆れたように呟くと、眠っている零を軽々と抱き上げ、寝室へと運んだ。

そっとベッドに下ろし、布団を整える。

(カーテン、閉めとこ……)

部屋に差し込む光を遮るようにカーテンを閉めると、白夜も零の隣に横になった。

(まつ毛、綺麗……)

白い肌に、子どものような無防備な寝顔。

こうして零の寝顔を眺めている時間が、白夜は好きだった。

いつも自分より早く眠り、遅く起きる零。そのため、寝顔をゆっくり眺められる機会は意外と多い。

(確か、今夜は任務が入ってたよな……。俺も寝とこ……)

白夜は小さく息を吐き、そっと瞼を閉じた。

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「ん、っ〜……」

白夜は伸びをしながら目を覚ました。

(今、何時……?)

「そろそろお昼か……。れ、」

隣にいるはずの零の姿がない。

白夜はベッドから起き上がると、パソコンが置いてある部屋へと向かった。

すると、そこには零の姿があった。

「んっ!」

白夜に気づいた零が、嬉しそうに手を振る。

「おはよ、零。美味しそうなの食べてるね」

そう言いながら、白夜は零の右手をそっと握り、その顔を覗き込んだ。

零はサンドウィッチを頬張っていた。まるでリスのように、頬をいっぱいにしている。

「口に入れすぎたらだめだよ笑。俺もなんか食べよっと……。あっ、おにぎりあるじゃん。零、これ食べていい?」

「コクッ、コクッ」

「ありがと。いただきまーす」

白夜はおにぎりを手に取った。

「あ、そうだ。零」

「ん?」

「今日、夜は俺、任務に入っちゃったからさ。夜は一人でちゃんと布団で寝てね。じゃないと風邪引くから」

「……コクッ」

零は心配そうに白夜を見つめた。

「大丈夫だよ笑。怪我せずに帰ってくるから。ちゃんと……星架曰く、情報系の任務らしいし」

「……き、っをつけて……ね」

「!」

白夜は一瞬目を見開いた。

「分かってる笑」

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なんだかんだと過ごしているうちに、出発の時間になった。

「零、俺行ってくるね」

「……んっ」

零は小さく頷き、白夜を見送った。

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零視点

(行っちゃった……)

白夜がいなくなった部屋は静まり返り、時計の音だけが響いていた。

(怪我なく、ちゃんと帰ってきますように……。あ、ちゃんと『いってらっしゃい』って言いたかったなぁ……)

パソコンの前に置いてある椅子に、深く腰を下ろす。

(何時に帰ってくるかなぁ……)

「白夜……」

「……?!」

自分でも驚いた。

今、すらすらと言えた。

いつもなら喉につっかえて、なかなか言葉が出てこないのに。

(白夜、早く帰ってこないかなぁ〜笑)

そんなことを考えながら、零は白夜の帰りを待ち続けた。

けれど、白夜は21時になっても、22時になっても帰ってこなかった。

(まだ帰ってこない……)

零は何度も時計を確認した。

それでも白夜が帰ってくる気配はない。

白夜に言われた通り、零は一人で布団に入り、眠ることにした。

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「ビィ゛ビィ゛!!!!」

「っ、??」

朝の静けさを破るように、緊急招集の音が鳴り響いた。

零は驚いて目を覚ました。

(白夜……)

隣に視線を向ける。

けれど、そこに白夜はいなかった。

(もう行っちゃったのかな……?)

重たい瞼を擦りながら、零は会議室へと向かった。

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「ガチャッ……」

「おはよ、零」

「ぉ、おはようございます、っ」

零は小さく挨拶を返し、会議室のソファーに腰を下ろした。

「よっし……これで全員揃ったな」

(白夜……来てない……。気づいてないのかな……?)

会議室には、どこか重苦しい空気が流れていた。

星架が全員を見渡し、口を開く。

「単刀直入に言う……。白夜が昨晩、何者かに拉致られた」

「え、っ゛?!」

零は思わず立ち上がった。

一斉に視線が零へと集まる。

「あ、っ……ご、ごめんなさい……」

慌てて座り直す零。

隣にいた風翠が、そっと背中をさすってくれた。

けれど、心拍数は上がり続け、呼吸も浅くなっていく。

頭の中が騒がしい。

(誰が……拉致なんか……。死んでないかな……白夜、大丈夫……?)

「零」

「ビクッ」

星架の声に、零ははっと顔を上げた。

「防犯カメラの追跡と、犯人の行方を追うことはできるか?」

「コクッ゛!!」

零は力強く頷いた。

「右龍、左龍は零の情報次第で動け」

「はい!!」

双子が揃って返事をする。

「華」

「んー?」

「何かあったときのために、準備を頼む」

「りょーかい」

「湊と陽は休みだ」

そして、星架は風翠へと視線を向けた。

「風翠は、自分が無理しない程度にサポートに回って」

「分かってるって。任せて」

「なら、解散」

それぞれが動き始める中、右龍が風翠に声をかけた。

「風翠さん」

「んー?」

「もし今、可能なら訓練相手になってください」

「いーよ」

そのやり取りを聞きながら、零は胸の中で呟いた。

(れいが、ちゃんとしないと……。白夜が、っ)

零は急いで自室へと戻った。

椅子に座り、自分のモニターを起動する。

画面に向き合い、指を動かす準備を整える。

(絶対……助けるから……)

(待っててね、っ……白夜!!)