「中島なちかさんが、今朝亡くなったそうです。」

その知らせを耳にした瞬間、思わず「嘘だよね」と呟いた。昨日まで元気だった、なちかちゃんが突然いなくなったなんて到底信じられない。そんなはずがない。心の中で何度も否定し続けた。

(違う、なちかちゃんは元気だよ。)

言葉は出ず、ただ胸の中でその否定を繰り返していた。

昼休みの掃除時間、先生が隅で泣き崩れているのを見て、たしかに胸騒ぎがした。そしてホームルームの時間、先生が震える声でなちかちゃんの死を告げた。その瞬間、なぜか涙は出なかった。明日もまたいつものように、元気ななちかちゃんに会える気がしていたからだ。

放課後、家へ向かう帰り道で母が待っていた。普段なら仕事で遅い父の姿もそこにあった。二人の目には涙が浮かんでいた。

「なちかちゃんが亡くなったんだね…」

母が静かにそう告げた。私はただ呆然と立ち尽くした。なちかちゃんが死んだなんて、到底受け入れられなかったからだ。

家に着くと、妙な違和感を覚えた。なちかちゃんの気配を感じたのだ。彼女が部屋のどこかにいるような気がした。最初は自分の思い込みだと思ったが、夜が深まるほどにその感覚は強くなった。廊下の隅や部屋の片隅で、物音や足音が微かに聞こえる。

「なちかちゃんが遊びに来てるよ。」

母にそう告げると、母は困ったように少し悲しげな顔をした。その姿を見ても、私はなちかちゃんが本当にそこにいると思い込んでいた。

それから毎晩のように、なちかちゃんの気配を感じた。物音が聞こえ、声のような響きが耳に残る。夜には私の名前を呼ぶような気配すらあった。暗闇の中で、ぼんやりと人影が浮かび上がることもあった。

それがなちかだとははっきり言い切れなかったが、きっと彼女だと信じていた。だって、いつもそばにいた彼女が突然いなくなるなんて、どうしても受け入れられなかったから。

「なちかちゃんなの?」

暗闇に向かって問いかけるたび、その気配は消えず、ただそこに静かに在り続けた。