海獣を見た。
無気味な姿だった。どう無気味か、説明しろと言われても言葉にならない。
朝、急に海が見たくなって、車を走らせた。僕の住んでいるところは、ものの30分も走れば、海が見えてくる。
休日の早朝とあって、道もすいていた。空は快晴。少しひんやりとして、窓を開けて走るのにちょうどいい。
海岸沿いの松林を右手に見ながら車を走らせると、松林の所々に切れ目があり、海岸へと通じる道がある。
僕が入り込むのはいつも決まっていて、左手にある大きな運動公園をすぎた後、コンビニがあり、そこから三番目の入り口だ。ちょうど車一台分通れる幅の砂道が海岸まで続いている。
松林を過ぎるとちょっとした空き地があり、僕はいつもそこで車を止める。
そこから海岸までは歩いてすぐだ。水筒を片手に歩いて行く。朝の空気にかすかな潮風がまざり、爽快感が増してくる。松林を過ぎるとすぐ砂浜が広がり、防波堤のような人工物は一切ない。
少し彎曲した入り江となっており、見渡す限り、人の痕跡を感じさせるものはまったくない。そこが好きなのだ。
いつものように車を松林の中に停め、歩いて海岸に向かった。
斜めに差し込む太陽の光が、波間に反射し、きらきらと輝いている。胸の奥まで沁みこむ潮風とあいまって、すがすがしい。
そのとき、一瞬、海面が大きく盛り上がった。
最初は、何が起きたのかわからなかった。次には、クジラかという思いが生じ、しかし、こんなところにクジラが出たということは聞いたことがないと否定した。
じっと、海面を見つめていると、また遠くの海面に異変が生じ、何か黒いものが見えた。クジラにはない、首のようなものがあった。
と思う間もなく、それは高々と飛び上がり、空中に弧を描いた。その軌跡を追いかけるように、海水が宙を舞う。
ぼくは慌てて携帯電話を取り出し、写真に収めようとした。
もう一度、もう一度、出てきてくれ。
しかし、願いも虚しく、海面の輝きには何の変化もない。
ぼくは午前中をそのまま無為に過ごした。
青空の下、岬の向こうのヨットハーバーから風に乗ってやってきた小型ヨットの一群が見え、砂浜には遊びに来た家族連れの姿も増えた。
こうなると、もう海獣が姿を現すことはあるまいと思い、車の中で横になった。いつの間にか眠ってしまったらしく、僕は夢の中で深い森の中をさまよっていた。
お腹がすいてきて、僕は目を覚ました。僕はそのまま車を走らせ、家に帰った。
無気味な姿だった。どう無気味か、説明しろと言われても言葉にならない。
朝、急に海が見たくなって、車を走らせた。僕の住んでいるところは、ものの30分も走れば、海が見えてくる。
休日の早朝とあって、道もすいていた。空は快晴。少しひんやりとして、窓を開けて走るのにちょうどいい。
海岸沿いの松林を右手に見ながら車を走らせると、松林の所々に切れ目があり、海岸へと通じる道がある。
僕が入り込むのはいつも決まっていて、左手にある大きな運動公園をすぎた後、コンビニがあり、そこから三番目の入り口だ。ちょうど車一台分通れる幅の砂道が海岸まで続いている。
松林を過ぎるとちょっとした空き地があり、僕はいつもそこで車を止める。
そこから海岸までは歩いてすぐだ。水筒を片手に歩いて行く。朝の空気にかすかな潮風がまざり、爽快感が増してくる。松林を過ぎるとすぐ砂浜が広がり、防波堤のような人工物は一切ない。
少し彎曲した入り江となっており、見渡す限り、人の痕跡を感じさせるものはまったくない。そこが好きなのだ。
いつものように車を松林の中に停め、歩いて海岸に向かった。
斜めに差し込む太陽の光が、波間に反射し、きらきらと輝いている。胸の奥まで沁みこむ潮風とあいまって、すがすがしい。
そのとき、一瞬、海面が大きく盛り上がった。
最初は、何が起きたのかわからなかった。次には、クジラかという思いが生じ、しかし、こんなところにクジラが出たということは聞いたことがないと否定した。
じっと、海面を見つめていると、また遠くの海面に異変が生じ、何か黒いものが見えた。クジラにはない、首のようなものがあった。
と思う間もなく、それは高々と飛び上がり、空中に弧を描いた。その軌跡を追いかけるように、海水が宙を舞う。
ぼくは慌てて携帯電話を取り出し、写真に収めようとした。
もう一度、もう一度、出てきてくれ。
しかし、願いも虚しく、海面の輝きには何の変化もない。
ぼくは午前中をそのまま無為に過ごした。
青空の下、岬の向こうのヨットハーバーから風に乗ってやってきた小型ヨットの一群が見え、砂浜には遊びに来た家族連れの姿も増えた。
こうなると、もう海獣が姿を現すことはあるまいと思い、車の中で横になった。いつの間にか眠ってしまったらしく、僕は夢の中で深い森の中をさまよっていた。
お腹がすいてきて、僕は目を覚ました。僕はそのまま車を走らせ、家に帰った。