私の父が長時間過ごす書斎やベッドからは、霊感なんて全くない私でさえ、異様な雰囲気が漂っているのがわかるんです。
近づくだけで、体がズッシリと重くなって、まるで見えない何かに押しつぶされそうな感覚に襲われるんです。正直、怖くて近づきたくありません。
父は毎日、体の不調を訴えていて、誰かに体を揉んでもらうと、決まってその相手は翌日、一日寝込んでしまうほど体調を崩すんです。私も一度、父の体を揉んだことがあるんですが、その瞬間、目眩がして倒れそうになったんです。何かが、そこにあるのは確かなんだと、私はそう感じていました。
ある晩、父が腰が痛いって言うから、私が自分のベッドと変えてあげました。その夜、両親が寝室の電気を消した瞬間、異変が起きたんです。
部屋中にラップ音が鳴り響いて、私は全く眠れなかったんです。そして、深夜の3時ちょうど。鈴の音が耳に響いて、目が覚めたんです。その音が、まるで私を起こすかのように。
その時、何が起こっているのか、空気を感じた瞬間、背筋が凍るような思いがしました。数人じゃない、数百人の気配が一気に部屋に満ちて、体中から冷や汗が吹き出してきました。みんな、何かを目指しているかのように、ゾロゾロと同じ方向へ歩いていくんです。まるで部屋が通り道みたいに、次々と通り過ぎていく、その恐ろしい光景は明け方まで続きました。
その時、ふと思ったんです。これは、きっと初めてじゃない。父にとっては、これが日常の光景なんだって、そんな風に感じました。
その夜、私はあることに気づいてしまいました。父は、見えない何かに対して、ただ者ではない使命を背負っているんじゃないかって。父がいる場所には、無数の霊が吸い寄せられてくるんです。何人じゃない、何百人もの死者が、父にしがみついて依存しているような、そんな感じがしたんです。
もしかしたら、この使命は先祖代々、受け継がれてきたのかもしれません。そして、窓から時々こちらを覗いている霊たちは、もしかしたら父を見張っているんじゃないかと思うんです。どこにも逃げられないように…。
実家にある井戸がなくなったら、霊たちはどこにも行き場を失ってしまうんじゃないかと、私は感じていました。周りの家々が次々と井戸を取り壊している中、父の家だけは未だに井戸を残している。それは偶然ではないと思うんです。
もし実家の井戸がなくなったら…その時、私たちはどうなってしまうんだろう。考えるだけで、震えが止まらなくなるんです。
そして、もうすぐ。父が「すぐ戻る」と言って音信不通になってから、3日目の夜がやってきます。
私は、ずっと震えが止まりません。