私の父方の家系は、先祖代々、お坊さんだったらしいんです。それが影響しているのか、父は異常なほど霊感が強くて、私には見えないものの姿や声が、常に聞こえているんです。
ある日、父が我が家の窓を指差して、恐怖に満ちた目で言ったんです。「あそこに、誰かが覗いている。」その声は震えていて、まるで何かに怯えているかのようでした。そして、言葉が続きました。
「楽しそうにしていると、あいつらは現れるんだ。」
その時の私は、正直なところ、父がまた妙なことを言い出したくらいにしか思っていませんでした。けれども、次第にその言葉が単なる冗談や思い込みではないと気づき始めたのです。
父が言うには、私たちが楽しく笑っていると、あの何かが姿を現すのだと言うんです。あまりにも怖くて、どうしていいかわからなくなりました。でも、父はそのことを何度も繰り返して言いました。
そして、父にはもう一つ変な習慣がありました。それは、三日以上家を空けないということです。というよりも、外泊することが絶対にないんです。あの神経質な性格で、枕が変わるだけで眠れない父だから、ただの癖だと思っていました。けれども、ある日、父がひどく酔って帰ってきたとき、ぼそっと呟いた一言が、私を完全に凍りつかせたんです。
「三日以上、オレが家を空けると、何が起こるかわからない。普段は言い聞かせてるから、あいつらは何もしてこないが…」
その言葉を聞いた瞬間、私は体中に冷たいものが走るのを感じました。
その意味が、あまりにも恐ろしすぎて、私はただ黙って聞いているしかなかった。心の中では、もううんざりしていたんです。父の話はきっと冗談だと思いたかった。でも、次第に私の目の前でも、あの窓がひときわ冷たい風を感じさせるようになってきたんです。それは、ただの風ではないような気がしてきました。