道路中央の注意看板は、あなたにしか見えていない可能性がある。

妙求市二丁目、阿左美(あざみ)通りの道路中央に注意看板が現れた。
樹脂製のサインキューブと呼ばれるものであり、公的機関が設置したものではなく個人所有のものだと思われる。付近に工事の予定はなかった。

この件を報告したSさんも、誰かのイタズラか、酔っ払いの仕業だと考えた。

それは朝日に照らされ、逆三角の赤いマークの下に「一時停止」と縦に筆記されていた。
さほど大きいものではなく、Sさんの腰ほどの高さだが、道路中央に置かれており、車が避けて通ることは難しい。

「え」

Sさんが見ている前で、車が通過した。

看板に変化はなかった。
何台もの車が通過した。

「なんなの」

Sさんは、警察への通報はしなかった。
目の錯覚だと自身に言い聞かせた。

翌日、事故が起きた。
注意看板にめり込み大破した車が本物かどうか、Sさんには判別がつかない。