次の日、Tちゃんは僕に話しかけてくれました。
でも、様子がおかしいのです。可愛らしい猫みたいな瞳は、てんでバラバラの方を向いています。しかも、何を言っているのかまるで分かりません。
「○×▼§♯◎◎×……」
ろんぱった目でニタニタ笑いながら、こちらの困惑などお構いなしに喋り続けています。
「なんだよあれ」
「ないわー」
Tちゃんのことを秘かに「可愛い」と言っていた男子たちが、薄気味悪そうに彼女を遠巻きに見ています。
その日から誰も、Tちゃんに話しかけなくなりました。
Tちゃんは授業中に突然、奇声を上げるようになりました。
「キエェー」「ギョエー」と、鶏みたいな声です。そのうち学校にも来なくなりました。
先生はこの話をどう思いますか?
僕はまだ、あの白い女に呪われているのでしょうか?そもそも、白い女とは一体なんなのでしょう。僕はこの先一生、白い女に怯えて生きなければいけないのでしょうか。どうしたら逃げられるのでしょうか?
Tちゃんはまだ学校を休んでいます。僕のせいでしょうか。
このところ、見なかったはずの祖母の死に顔が、なぜか浮かんできます。目をくわっと見開いて、顎が外れそうなほど大きな口を開けて――。
あんな顔をするような目に遭って死ぬのは嫌です。
それとも、目をつけられた僕は、殺されることは無いのでしょうか。
でもそれは、死ぬよりも恐ろしくて辛い目に遭うということかもしれません。想像しただけで狂ってしまうような、恐ろしい目に……。
あれ以来、白い影が視界を過ります。血のような残照に照らされた帰り道に、真夜中の暗い廊下に、白い女がいる気がします。
このままでは連れていかれてしまいます。魔除けの方法を調べたり、図書館の本からお札を印刷したりしましたが、効果はありません。
お祓いをしてくれる人を紹介してください。
親には言えません。もちろん友達にも。というより、もう友達はいません。みんな先生やTちゃんを狂わせてしまった僕を憎んでいます。
ひそひそ交わされる内緒話を気にせず話しかけてくれるのは、B君くらいです。
先生は白い女について、何かご存知でしょうか。
滅茶苦茶な手紙ですみません。お返事お待ちしています。どうか僕を助けてください。