「だったらよかった。じゃあそういうことだから、アキトくんのパソコン借りていくね」
「え……?」
「後はわたしがやっておくから、アキトくんはしっかり眠って、体調を良くすることだけに集中してってこと。校外学習に絶対に間に合うようにね」
「でもそれは……僕の自己満足に、ひまりちゃんを巻き込めないよ」
「ざーんねん。これはわたしの自己満足なの。わたしがやりたいだけなの。だからアキトくんの自己満足とかは、もう関係ないんだよねー」
ひまりちゃんがにっこりと笑った。
「……これは一本取られたね」
「むふふーん♪」
これは相手の言葉や論理をそっくりそのまま使って返すという、論破芸のテクニックの一つ「おうむ返し」だ。
だけどここまで綺麗に決まるのは滅多にない。
さすがひまりちゃんだ。
「ひまりちゃんの自己満足なら、僕にはどうしようもできないかな」
見事に論破されてしまった僕は、小さく苦笑した。
「でしょでしょ?」
「これは過去一で完全論破されちゃったかも。さすがはひまりちゃんだね」
「なにせアキトくん仕込みの論破芸だからね。病人を言いくるめるくらい、ちょちょいのちょいだしー」
「ひまりちゃん……ありがとう」
「だからわたしの自己満足なんだってば。ありがとうなんて、いらないの」
「うん、そうだった」
まったくもう、ひまりちゃんは本当にできた妹だよ。
いい子すぎて、涙が出てきそうだ。
「確認なんだけどパスワードは『himari1212』でいいんだよね? わたしの名前と誕生日の組み合わせ」
「え? ああうん。よく知ってるね。勝手に個人情報を使わせてもらってる」
覚えやすく、自分の誕生日よりは幾分か安全性も高いであろうこのパスワードを、僕は割といろんなところで使っていた。
「ぜんぜんいいよー」
「あれ、でもひまりちゃんにパスワードを教えたことってあったっけ?」
「うん、あったんじゃない」
「知ってるってことは、そうなんだよね。ごめん、なんか変なこと聞いちゃって」
僕が覚えていないだけで、どこかで教えたんだろう。
一緒に動画を見たりしたことはそれほど山ほどある。
その時に言ったのかもしれない。
「ううん、たいしたことじゃないし、ぜんぜん気にしないでー」
ひまりちゃんがにへらーと素敵な笑顔を浮かべた。
まぁ、ひまりちゃんに隠すようなことは何もないし、そこは別に問題じゃない。
今達成すべき目標は、遠足のしおりを完成させること、ただそれだけなのだから。
「よろしく頼むね」
「合点承知の助~!」
「あとはブラウザのブックマークに校外学習ってフォルダがあって、そこに役立ちそうなサイトを見繕ってるから、それを見ながらまとめるといいんじゃないかな」
「ブラウザね、了解」
「一応、ある程度まとめた情報もメモ帳に書いてデスクトップに置いてるから、良かったらそれも参考に。校外学習ってファイル名だからすぐわかるはずだよ」
「それもりょーかーい」
「あとはもう、ひまりちゃんが好きにやってくれてかまわないから。ひまりちゃんの自己満足でいい感じに」
「はーい」
「できそう? 月曜日の放課後には鈴木先生に原本を渡したいんだけど」
「任せてー。資料集めはアキトくんが終わらせてくれてるみたいだし、雪希ちゃんにも声かけてみるから、もうぜんぜん余裕だよー。だからアキトくんはゆっくり休んでね?」
「ひまりちゃんがそう言うなら、絶対に大丈夫だね。僕はゆっくり休ませてもらうよ」
必要なことを全てを伝え終えて安心した僕は、ゆっくりと席を立った。
すぐにひまりちゃんが身体を支えてくれて、ベッドまで連れて行って、寝かせてくれる。
横になると、それだけですごく楽になった。
掛け布団を首元までしっかりとあげる。
さぁ、僕は僕のやるべきことをやり抜こう。
何がなんでも火曜日の校外学習までに、体調を万全にしてみせる!
「アキトくん、お休みなさい」
僕のノートパソコンを持って出ていくひまりちゃんを薄眼で見送ると、僕は眠りについた。
後顧の憂いがなくなって気持ちが楽になったからか、信じられないほどぐっすりと眠ることができた。
「え……?」
「後はわたしがやっておくから、アキトくんはしっかり眠って、体調を良くすることだけに集中してってこと。校外学習に絶対に間に合うようにね」
「でもそれは……僕の自己満足に、ひまりちゃんを巻き込めないよ」
「ざーんねん。これはわたしの自己満足なの。わたしがやりたいだけなの。だからアキトくんの自己満足とかは、もう関係ないんだよねー」
ひまりちゃんがにっこりと笑った。
「……これは一本取られたね」
「むふふーん♪」
これは相手の言葉や論理をそっくりそのまま使って返すという、論破芸のテクニックの一つ「おうむ返し」だ。
だけどここまで綺麗に決まるのは滅多にない。
さすがひまりちゃんだ。
「ひまりちゃんの自己満足なら、僕にはどうしようもできないかな」
見事に論破されてしまった僕は、小さく苦笑した。
「でしょでしょ?」
「これは過去一で完全論破されちゃったかも。さすがはひまりちゃんだね」
「なにせアキトくん仕込みの論破芸だからね。病人を言いくるめるくらい、ちょちょいのちょいだしー」
「ひまりちゃん……ありがとう」
「だからわたしの自己満足なんだってば。ありがとうなんて、いらないの」
「うん、そうだった」
まったくもう、ひまりちゃんは本当にできた妹だよ。
いい子すぎて、涙が出てきそうだ。
「確認なんだけどパスワードは『himari1212』でいいんだよね? わたしの名前と誕生日の組み合わせ」
「え? ああうん。よく知ってるね。勝手に個人情報を使わせてもらってる」
覚えやすく、自分の誕生日よりは幾分か安全性も高いであろうこのパスワードを、僕は割といろんなところで使っていた。
「ぜんぜんいいよー」
「あれ、でもひまりちゃんにパスワードを教えたことってあったっけ?」
「うん、あったんじゃない」
「知ってるってことは、そうなんだよね。ごめん、なんか変なこと聞いちゃって」
僕が覚えていないだけで、どこかで教えたんだろう。
一緒に動画を見たりしたことはそれほど山ほどある。
その時に言ったのかもしれない。
「ううん、たいしたことじゃないし、ぜんぜん気にしないでー」
ひまりちゃんがにへらーと素敵な笑顔を浮かべた。
まぁ、ひまりちゃんに隠すようなことは何もないし、そこは別に問題じゃない。
今達成すべき目標は、遠足のしおりを完成させること、ただそれだけなのだから。
「よろしく頼むね」
「合点承知の助~!」
「あとはブラウザのブックマークに校外学習ってフォルダがあって、そこに役立ちそうなサイトを見繕ってるから、それを見ながらまとめるといいんじゃないかな」
「ブラウザね、了解」
「一応、ある程度まとめた情報もメモ帳に書いてデスクトップに置いてるから、良かったらそれも参考に。校外学習ってファイル名だからすぐわかるはずだよ」
「それもりょーかーい」
「あとはもう、ひまりちゃんが好きにやってくれてかまわないから。ひまりちゃんの自己満足でいい感じに」
「はーい」
「できそう? 月曜日の放課後には鈴木先生に原本を渡したいんだけど」
「任せてー。資料集めはアキトくんが終わらせてくれてるみたいだし、雪希ちゃんにも声かけてみるから、もうぜんぜん余裕だよー。だからアキトくんはゆっくり休んでね?」
「ひまりちゃんがそう言うなら、絶対に大丈夫だね。僕はゆっくり休ませてもらうよ」
必要なことを全てを伝え終えて安心した僕は、ゆっくりと席を立った。
すぐにひまりちゃんが身体を支えてくれて、ベッドまで連れて行って、寝かせてくれる。
横になると、それだけですごく楽になった。
掛け布団を首元までしっかりとあげる。
さぁ、僕は僕のやるべきことをやり抜こう。
何がなんでも火曜日の校外学習までに、体調を万全にしてみせる!
「アキトくん、お休みなさい」
僕のノートパソコンを持って出ていくひまりちゃんを薄眼で見送ると、僕は眠りについた。
後顧の憂いがなくなって気持ちが楽になったからか、信じられないほどぐっすりと眠ることができた。


