「うぉああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!!!」

 試合をひっくり返すビクトリーショットを見届けた僕は、本能のおもむくままに獣のような雄たけびを上げると、渾身のガッツポーズをした。

 1度きりではなく、2度、3度、4度、5度と、僕は握った拳をブンブンと上下させる。

 感情が(たかぶ)って、燃え盛って、爆発してしまって、それが自分で分かっているのに抑えることができない。

 こんなにも感情が溢れたのは、いったいいつ以来だろうか?

 たかが親睦球技大会のシュート1本。
 成績にもなんにも関係しない、記録すらされない2得点。

 だけど今のシュートは僕にとって、これ以上なく重くて、大切で、意味があって、何よりも想いのこもった1本だった。

 喜びを爆発させる僕の所に、チームメイトたちが一斉に駆け寄ってくる。

「やりやがったな神崎兄!」
「ナイシュー!」
「今のマジヤバイって!」
「さすがにこの結末は、詰将棋で鍛えた俺の頭脳でも予測できなかったよ」

 僕は首にガシッと腕を回され、背中をバシバシと叩かれ、髪の毛をワシャワシャっと荒っぽく撫でられてと、一瞬でもみくちゃにされる。

「みんな、ありがとう! それもこれも、みんなが一丸になって気合でボールを回してくれたおかげだよ!」

 手洗い祝福を受けながら、僕はチームメイトたちに最大限の感謝の言葉を伝えた。

 あのシュートは、決して僕だけの力で決められたシュートじゃない。
 みんなの必死のプレーでボールを奪い、そこから繋がって、最後はひまりちゃんの声援も後押ししてくれて。

 つまりみんなの力が合わさって、僕にあのシュートを決めさせてくれたのだ。

「謙遜すんなってーの。見ててバチクソヤバかったからよー! 俺、声出ちゃってたもん。イケーって!」

「そうそう! リングに当てて跳ね返ったのを空中で取ってそのままシュートとか、なかなかのエンターテイナーっぷりだったじゃんか。もうお前、ラノベ作家目指せよ!」

「一人アリウープでブザービーター逆転ゴールとか、おまえ漫画の主人公かよって思ったぜ!」

「まさに神の一手だったね。例えるなら、竜王戦で見せた藤井聡太の▲4一銀。賞賛以外の言葉では語れないよ」

 最後の例えだけちょっと意味が分からなかったけど、みんなも僕と同じようにテンションが上がっていることは、これでもかと感じられる。

「あれは狙ったわけじゃないんだけどね。むしろ最初のシュートが入ってくれたら、全然それでよかったんだけど」

 僕は苦笑いを返すと「って、それより石崎は怪我は大丈夫なのか?」と、さっきボールを空中でコート内に戻す時に、ちょっと怖い落ち方をした石崎に尋ねた。

 あの時はせっかく繋いでくれたボールを、なんとかゴールに繋げるんだって必死だったから後回しにしてしまったけど、石崎が骨折でもしていたら大変だ。

「そういや興奮しすぎてすっかり忘れてた。うん、痛いは痛いけど、わりと大丈夫だな。骨とかは折れてないっぽい」

 しかし石崎はケロッとした顔で、落ちた方の肩をグルグル回しながら元気な返事を返してきたので、僕は一安心した。
 大事には至らなかったようで、なによりだ。

 勝ったのは嬉しいけど、そのためにチームメイトが大怪我をしていたら喜びも半減というものだ。

「あっと、そろそろ整列しないとだよ。行こう」

 僕たちは興奮冷めやらぬままに試合終了の礼をすると―─負けた5組のメンバーからも興奮気味にお褒めの言葉を頂いた――コートを後にして、今度は1組のクラス席へと向かう。

 すると同じように喜びはしゃぐクラスメイト達の中から、ひまりちゃんがスルスルッと抜け出て話しかけてきた。