僕の大切な義妹(ひまり)ちゃん。~貧乏神と呼ばれた女の子を助けたら、女神な義妹にクラスチェンジした~

 シャンプーのCMに出てくる女優さんのような、さらさらでキューティクルな長く美しい黒髪。

 端正に整った顔立ち。

 ひまりちゃんが太陽の下で元気に咲くパンジーの花のように愛くるしい可愛さだとしたら、雪希は月明かりに照らされた百合の花のような高貴な美しさを持っていた。

「だってー、アキトくん。頑張った甲斐あったね~♪」
「はいはい……。ごめんな、雪希。ひまりちゃんはちょっとブラコン気味なんだ」

「えー、妹がお兄ちゃんを好きで何が悪いの?」
「物には限度ってものがあるんだよ。お金だって借り過ぎるとそれ以上は貸してくれなくなるだろ?」

「お金と違って兄妹愛には限度額なんてないしー」
「あるよ。世間体とか一般常識って言う形でね」

 僕とひまりちゃんの間で、論破合戦を始まった。
(幼い頃にイキっていた僕の影響で、ひまりちゃんはすごく論破合戦が得意なのだ。それこそ僕よりも)

「それってつまり、誰かに迷惑をかけないためのルールだよね?」
「ここには雪希がいる。雪希だって度が過ぎたブラコンを見せられたら、反応に困るだろ?」

「つまり雪希ちゃんが困ってなければいいんだよね? ね、雪希ちゃん。困ってないよね?」
「困ってるよな、雪希?」

「ふふっ、本当に仲が良いんですね。羨ましいです」

 僕とひまりちゃんの双方から問われた雪希が、ハイともイイエとも言わずににこやかに笑った。
 あえてズレた回答をすることで、議論自体をうやむやすにして終わらせる高等技術だ。
 さては、できるなお主?

「さーてと。道端であんまり引き止めちゃ悪いよな。そろそろ行こうかひまりちゃん」

 いつの間にか、結構ガッツリと話し込んでしまっていた。
 無益な論破合戦をしていても生産性がないし、話が途切れたこのタイミングは解散のいい頃合いでもあるだろう。

「あ、ほんとだ。ごめんね、雪希ちゃん。長々と話し込んじゃって」
「そんな、ぜんぜん。私もお話ができて楽しかったです。あの、良かったら――」

「なに?」

「良かったら友達になりませんか? その、実は私、中学の時に少し浮いていて、あまり友達がいなくって。新しい高校で友達ができるかなって、心配だったんです」

 雪希がおずおずと切り出した。

 雪希は受け答えもいたって普通だし、こんな綺麗な子なのに友達がいないなんてことあるんだな、なんて僕が不思議に思っていると、

「え、もう友達でしょ? ねぇアキトくん」
 ひまりちゃんがにへらーと、いつものゆるーい笑顔で言った。

「だよな。名前で呼び合ってるんだし、もう友達だよ」
 それについては僕も異論はない。

「ぁ――」

「もう仲良しなのに、わざわざ友達になろうなんて聞いてくるなんて、へんな雪希ちゃん。ってわけでライン交換しよっ♪」

「あ、えっと」

「ほらほらスマホ出してー」
「は、はいっ」

 ひまりちゃんに急かされて、雪希がいそいそとスマホを取り出す。
 僕もスマホを取り出して、3人でちゃっちゃとライン交換を済ませた。

 早速、目の前の雪希にスタンプを贈ると、雪希がわたわたとスマホを操作して、少ししてからスタンプが返ってくる。
 可愛らしい子犬が「よろしくお願いします」と礼をしているスタンプだった。

「じゃあ、また明日学校でね。ばいばーい」
「また明日」
「はい、また明日、学校で」

 別れの言葉を交わすと、雪希が駅に歩いていくのを2人で見送る(僕とひまりちゃんは徒歩通学だ)。

 駅の構内に入って見えなくなる前に、雪希はこちらを振り返ると、にっこり笑いながら右手を振ってくる。
 僕とひまりちゃんも笑顔で右手を振って返した。

 こうしてナンパ男を撃退するミッションは、雪希と友達になって幕を閉じた。
 雪希と別れた僕たちは、再び帰り道を歩き始める。

「雪希ちゃんには災難だったけど、アキトくんの格好いいところが見れたのは、良かったかなー」
「友達の振りをしただけだし、別にカッコよくもなんともないでしょ」

 色眼鏡を何重にもかけたひまりちゃんに、僕はいつものように苦笑を返す。

「またまた謙遜しちゃってー。雪希ちゃんも、アキトくんに助けられてキュンって来てたみたいだし」
「何をバカなこと言ってるのさ。ひまりちゃんじゃあるまいし」

「むむっ! アキトくん、今のはどういう意味かなー?」
「言葉どおりの意味だけど? 胸に手を当てて考えてみなよ?」

 するとひまりちゃんがなぜか僕の手を取って、自分の胸へと押し当てた。
 むにゅりと、女の子にしか存在しない柔らかい感触が、僕の手のひらに返ってくる。

「どうどう?」
「ちょ、ひまりちゃん!?」

 突然のハレンチ行動に、慌てて手を引いた僕を見て、

「あはは、アキトくん照れてるし~♪」
 ひまりちゃんがケラケラと楽しそうに笑う。

「あのね、ひまりちゃんももう高校生なんだから、そういうのはやめないとだよ」

「もっともらしいことを、顔を真っ赤にして早口で言われても説得力ないでーす」
「むぐっ……」

 などと他愛もない(?)兄妹の会話をしながら、僕とひまりちゃんは家路を歩いて行ったのだった。


◇ ひまりタイム ◇

 その日、つまりは高校の入学式の日の夜。
 お風呂に入ってパジャマに着替えたわたしは、部屋の窓からお月さまを眺めながら、今日という日を振り返っていた。

「今日のアキトくんは、最近のアキトくんとはちょっと様子が違ってたよね。なんだか昔に戻ったみたいだったし」

 誰もやらないクラス委員に立候補したし、ナンパされていた雪希ちゃんを助けにも行った。
 小さい頃と違って、中学生の頃のアキトくんはあまり積極性を見せなかったのに、今日はまるで小学校の頃に――わたしを助けてくれた頃に戻ったみたいだった。

「最近のアキトくんもそれはそれでアンニュイな感じがして素敵だったけど、今日のアキトくんは別格だったなぁ。キラキラって感じで格好良かったぁ……むふふ……」

 今日のアキトくんを思い出すだけで、わたしの胸はうるさいくらいに高鳴っていく。

「でも、格好よすぎるのも問題だよね」

 アキトくんが助けた女の子――雪希ちゃん。
 ナンパから助けたことで友達になった、さらさらの黒髪が本当に綺麗な、お姫様のような女の子。
 だけど――。

「間違いなく、あれは恋する乙女の目だったよね。うん、アキトくん検定10段のわたしには分かるんだから」

 アキトくんのわずかな動作にも逐一反応して、すごく嬉しそうな顔をしていたから、すぐに分かってしまった。

「うーむ。これはちょっと、手ごわそうかも……」

 自分で言うのもなんだけど、わたしは結構可愛いと思う。
 中学の時は「女神ひまり」なんて、男子から呼ばれることもあった。

 だけど雪希ちゃんは別格だった。
 まるで物語のお姫様が、現実の世界へと飛び出してきたみたいだ。

 美少女レベルが他を圧倒していた。

 なのに全然偉そうなところもなくて、自分の美しさをひけらかすでもない。
 あれで友達がいなかったなんて、いったい何の冗談だろう?

「あれかな? 美人過ぎて、周りから一方的にやっかみを受けちゃった系かな?」

 かく言うわたしにも、そういう経験があった。
 もちろん、わたしにはアキトくんって素敵なお兄ちゃんがいたから、全然へっちゃらぴーだったんだけど。

 それはそれとして。

「雪希ちゃんは観察を続ける必要があるよね。強力な恋のライバルになりそうだし。しかもアキトくんもまんざらでもないみたいだったし!」

 あれだけの美少女に好意を寄せられたら、難攻不落のアキトくんもころっと落ちるのでは?
 正直、不安でいっぱいだ。

「でも負けないもん。友達でも、それとこれとは話が別だし。アキトくんは渡さないんだから。というわけで、まずは妹の立場を存分に生かさないとね」

◇ ひまりタイム END ◇
 入学式の日の夜。

「明日から早速、授業だ。教科書、ノート、筆記用具。うん、準備はバッチリ」

 明日の準備をしっかりと確認した僕が、少し早いけど明日に備えてもう寝ようかと思っていると、

 コンコン。

「アキトくーん、入るよ~」
 ノックとほぼ同時に部屋のドアが開いて、パジャマ姿のひまりちゃんが入ってきた。

 お気に入りのジェラピケの春秋用もこもこパジャマを着たひまりちゃんは、女神のように可愛らしい。

 このパジャマは、ひまりちゃんがテレビで見て可愛いと言っていたのを聞いて、お店のお手伝いを頑張ってお小遣いを貯めて、誕生日プレゼントで買ってあげたんだけど。
 これだけ気に入ってくれたら、僕も頑張った甲斐があったと言うものだった。

 あと、毎日のようにパジャマ姿のひまりちゃんを見られるのは、お兄ちゃんの特権だよなぁ。

「こんな時間にどうしたんだ? もうそろそろ寝る時間だろ? ちゃんと明日の準備はしてる?」

「もち、ちゃんとしてるよー。お月様が綺麗だから、アキトくんと一緒に見ようと思ったの――って、もう雨戸を閉めちゃってるじゃん」

 ひまりちゃんはそう言うと、部屋の電気を消してから、ベッド脇の窓の雨戸をガラガラっと開けた。
 真っ暗になった部屋に、優しい月明かりが差し込んでくる。

 ベッドに上って窓ガラス越しに空を見上げると、雲一つない夜空に、満月ではなかったけど、大きなお月様が悠然と浮かんでいた。

「ほんとだ。綺麗なお月様が浮かんでる」
「でしょでしょ?」

 ベッドから月を見上げる僕に、ひまりちゃんが身体を寄せてくると、キュッとひっついてきた。

「どうしたんだ?」
「新生活が始まって、いろいろ緊張とかもして疲れたから、甘えたい気分なのー」

「まったく。大きくなっても、ひまりちゃんは甘えん坊だなぁ」
「アキトくんにはつい、甘えたくなっちゃうんだよね。えへへ」

 ひまりちゃんは今でも僕を頼ってくれる。
 その期待は裏切りたくない。

「そっか」

 そっけなく答えた僕に、にへらーと笑ったひまりちゃんがさらにギュッとくっついてきて、そこで会話がプツリと途切れる。

 月明かりの差し込む薄暗い部屋で、もこもこパジャマごしにひまりちゃんの体温をじんわりと感じる。
 きっとひまりちゃんも僕の体温を感じているだろう。

 しばらく兄妹で肩を寄せ合って月を見上げていると、
「今日は一緒に寝たいな? だめ?」
 ひまりちゃんが耳元でささやくように呟いた。

 くすぐったくて、僕は思わず肩をビクリと震わせる。

「もう高校生になったんだから、一人で寝ないと」
「今日だけだから、ね? だめかな?」

「今日だけって、ひまりちゃんはいつもそう言うよね?」
「えへへー、そうだっけ?」

「そしていつも笑って誤魔化すんだ。ま、今日だけな?」
「やった♪」

 本当ならここはビシっと厳しく指導しなければならないのだろうけど、甘えてくるひまりちゃんは本当に可愛くて。
 だから僕はいつもこうやって、ひまりちゃんを甘やかしてしまうのだった。

 ひまりちゃんが自分の部屋に枕を取りに行っているあいだに、再び雨戸を閉める。
 ひまりちゃんが戻ってきて、真っ暗になった部屋で、僕たちは1つのベッドで肩を並べて横になった。

 すぐにひまりちゃんが僕の左腕を抱きかかえてくる。
 これも昔からずっと繰り返されてきたことなので、今さらそれについては言及はしない。

 ただ、ひまりちゃんの女の子な部分が年々、柔らかさと大きさを増していくことだけは、僕の心の平穏という観点で問題ではあったけれど。

「アキトくん、今日はすごくカッコよかったよ。おかげで雪希ちゃんとも仲良くなれたし」

「高校に入ってすぐに友達ができたのは良かったよな」
 僕は前半部分はスルーして、後半部分にだけ答える。

「優しそうな人だし、高校生活も楽しくなりそう♪ 改めて高校でもよろしくね、アキトくん」

「こちらこそよろしくね、ひまりちゃん」

 それからベッドの中で他愛もない話を少しだけしてから、僕たちは眠りについた。

 こうして少しだけ頑張った高校生活初日は、ひまりちゃんのぬくもりを感じながら、静かに幕を閉じたのだった。
 翌朝。
 高校へと向かう通学路。

「昨日はよく寝れちゃった♪ やっぱり睡眠って大事だよね~」
「言っておくけど、今日は別々に寝るからね」

「ええ~! けち~!」
「昨日も言ったけど、僕たちもう高校生なんだから」

「アキトくんだって、ぐっすり寝れたって言ってたでしょ~!」
「それとこれとは話が別だから」

「別じゃないし~!」
「ほら、人通りも増えてきたからこの話は終了な」
「はーい」

 朝からご満悦なひまりちゃんに、兄としてしっかり釘を刺しながらと高校に向かっていると、駅前で雪希と出くわした。

「おはようございます暁斗くん、ひまりさん」
 ドラマで見るような極上の女優スマイルとともに挨拶をされて、

「お、おはよう」
 僕は少し緊張気味に、

「おはよー、雪希ちゃん♪」
 ひまりちゃんはにへらーと、いつもと変わらぬ可愛らしい笑顔で挨拶を返す。

「もしかして待っててくれた?」
 少し気になったので聞いてみる。

「えっと、少しだけ。でも駅を降りて見渡したら、遠くにお二人の姿が見えたので、本当に少しだけです。見えなければ1人で行きましたから」

「わーい、ありがとう雪希ちゃん♪」
 ひまりちゃんが雪希に抱きついた。

「ひ、ひまりさん?」
「ん~、いい匂いアーンドいい抱き心地~♪」

「えっと、あの──」
「それに髪、すごいサラサラだよね? どこのシャンプー使ってるの? 外国製? 特注品? 教えて欲しいなぁ」

「普通にスーパーで売っている花王のシャンプーですけど……」
「え~! 絶対ウソだって~! ね、アキトくんの内緒話いっぱい教えてあげるから、教えて~?」

「ほ、ホントです……ち、ちなみに、どんな話なんでしょうか?」
「そうだね~。たとえば――」

「こらこらひまりちゃん。僕を交渉材料にするのはやめようね」

 イキっていたころの黒歴史を暴露されてしまっては大変だ。
 思い当たる節はそれこそ山ほどある。
 僕は慌てて2人の会話に割って入った。

 そんな可愛いひまりちゃんと美人の雪希。
 目を引く2人が仲睦まじくじゃれ合う姿に、道行く生徒たちがほとんど全員が全員、視線を向けてくる。

 ついでに僕に向けて「なんでこいつが一緒なんだ?」みたいな怪訝な視線も飛んできた。

 ま、気にしても仕方がない。
 ひまりちゃんと雪希という2つの美しい花の前では、僕なんてただの名もなき雑草なんだから――今は、まだ。

「ひまりちゃん。ほら、行くよ」
「はーい」

 僕を真ん中に、雪希を解放したひまりちゃんを左に、雪希を右にして3人で並んで歩きだす。
 僕たちは昨日知り合ったばかりってこともあって、会話はほとんどがお互いの身の上話だ。
 
「それで、アキトくんがわたしを家に連れていってくれて、特製エビチャーハンをご馳走してくれたの。アキトくんのおうちは大衆食堂をやってて。あ、今もやってるんだけど。もうすっごく美味しくて、テレビで取り上げられたこともあるんだよ?」

「なるほど、暁斗くんは昔からヒーロー気質だったんですね」
「そうなのそうなの! アキトくんはわたしのヒーローなんだから♪」

 幼い頃の僕との思い出を嬉しそうに語るひまりちゃんと、それを興味津々な様子で聞いている雪希。
 僕は盛り上がる会話になるべく水を差さないように気を付けながら、気になるところに少しだけ訂正を付け加える。

「ご馳走したのは僕じゃなくて父さんだけどね」

「アキトくんが連れていってくれなかったら食べられなかったんだし、おおむね合ってるしー」

「ひまりさんが暁斗くんにベッタリになるのも納得ですね」
「でしょでしょ?」

「私も昨日、助けてもらってすごく頼もしく感じましたから」
「ふーん?」

「な、なんでしょうか?」
「別にー。アキトくんはモテるなーって思っただけー」

「そ、そういうのでは、あの、その……」

 僕を間に挟みながら、2人して僕のことでキャイキャイと盛り上がる。
 なんとも気恥ずかしい気分にさせられながら、僕は通学路を歩いて行った。


 お昼休み。

「メシどうする?」
「オレ学食ー」

 午前の授業を終えて教室が一気に一気に騒がしくなる中、

「アキトくん、雪希ちゃん。一緒にご飯食べー♪」
 にへらーと柔らかな笑みを浮かべたひまりちゃんが、声をかけてきた。

 ちなみに雪希の席はひまりちゃんの1つ前だ。
「上白石」と「神崎」なので、さもありなん。

 僕の席もひまりちゃんの隣なので、近場の3人で机をくっつけてお弁当島を作る。

「女神ひまりとプリンセス雪希と一緒に弁当とかマジかよ」
「俺も混ざりてぇ」
「羨ましい……」

 クラスメイトたち(特に男子)が驚きと羨望の入り交じった視線を向けてくるが、いちいち構ってられないのでスルーした。
 ひまりちゃんの隣にいるというのは、こういうことの連続だ。

 しかも今は雪希までいる。
 物語に出てくるお姫様のように綺麗な雪希は、入学2日目にして一部男子からプリンセスの二つ名で呼ばれていた。

 雪希本人はまだその呼び名を知らないみたいだけど、そう遠くないうちに耳に入るのは間違いない。
 恥ずかしがる姿が今から目に浮かぶよ。

 それはさておき。
 早速、弁当箱を開けると、

「お二人とも、豪勢なお弁当ですね」
 僕とひまりちゃんの中身は同じ・量だけ違うお弁当を見た雪希が、驚きの声を上げた。

「昔から父さんが朝の仕込みのついでに作ってくれるんだ。だからお弁当は普通よりも豪華な感じかな」

「お父さんのご飯、美味しいから嬉しいよね~♪ しかも今日はエビチャーハンだし♪ やった♪」

 大好物のエビチャーハンを見て、ひまりちゃんが相好を崩した。

「じゃあ食べようか。いただきます」
「いただきまーす」
「いただきます」

「早速、雪希ちゃんにエビチャーハンをお裾分け~」
 ひまりちゃんがエビチャーハンをお箸ですくって、雪希のお弁当の白米の上に載せた。

「いいんですか? ひまりさんの大好物なんですよね?」

「いいのいいの。この美味しさを、1人でもたくさんの人に知ってもらいたいだけだから。わたしは言うなればエビチャーハンの伝道師ひまり」

「おおっ、なんかひまりちゃんがカッコいい」
「ふふふ、まぁねー」

「しかも大好物のエビチャーハンをプレゼントするだなんて、大人になったねひまりちゃん」
「あ、そうだった。減ったエピチャーハンは、アキトくんから回収っと」

 ひまりちゃんが僕のお弁当から、雪希にあげたエビチャーハンと同じ分量(むしろ多いかも)を、お箸でひょいっとすくいあげて自分のお弁当に移した。

「……ねぇ、ひまりちゃん? それだと僕のエビチャーハンを、雪希に渡したことになるんじゃないかな?」

「そ、そうなりますね」
 ひまりちゃんが載せてくれたエビチャーハンを、今まさにお箸で掴もうとしていた雪希の手が、直前でピタリと止まった。

「それくらい、いいじゃん? モノは一緒でしょ? ほら、雪希ちゃん。細かいことは気にせずに、食べて食べて♪」

「ええっと……」
 雪希が眉を寄せた、いかにもな困り顔で僕を見てきたので、僕は笑顔で言ってあげた。

「あはは、気にしないでいいよ。父さんのエビチャーハンを一人でも多くの人に食べてもらいたいのは、僕も同じだからさ。せっかくの機会だし、本当に美味しいから、ぜひ雪希にも食べて欲しいな」

「アキトくん、ないすぅ♪」
 ひまりちゃんがグーっと左手の親指を立てた。

「そういうことなら、ありがたく頂きますね。……ふわっ! 美味しいです! エビがプリプリで、冷えてるのに油っぽさも全然感じません!」

 一口食べた途端に、雪希がまたまた驚きの声を上げた。

「ふふん、そうでしょそうでしょ? 絶品でしょ? しかもこれ、冷えた時用のレシピだから、出来立ての熱々を出すお店じゃ食べられないんだよ?」

 大好物の父さんのエビチャーハンを褒められて、ご満悦のひまりちゃんだ。

「お弁当用のスペシャルレシピというわけですね」
「そういうこと♪ じゃ、わたしも食ーべよっと。うん、今日も美味しい♪」

 あの日、初めて食べた時とまったく変わらない様子で、本当に美味しそうにエビチャーハンを食べるひまりちゃんを見ていると、僕の心もあの頃に戻ったみたいで、高校デビューをがんばる力がモリモリと湧き上がってくるのだった。
 そして迎えた放課後。
 初日の授業を全て終え、帰りのホームルームもつつがなく終了し、教室中が昼休みをはるかに超える熱気と開放感に満ち満ちた喧騒に包まれている中、

「ねぇねぇ雪希ちゃん。わたしたち今から駅前のカラオケに行こうと思ってるんだけど、せっかくだし雪希ちゃんも一緒に3人で行かない?」

 ひまりちゃんが持ち前の積極性で、雪希に放課後カラオケを提案した。

「実は私、カラオケって行ったことがないんです。騒がしいのはあまり得意じゃなくて。それにその、あまりそういうことをする友達もいなくて……」

「だってさ、ひまりちゃん」
「そっかぁ。ざーんねん」

 と、思いきや。

「なので、せっかくの機会なのでカラオケを体験してみたいな、と思います」
 雪希からはOKの返事が返ってきた。

「無理しなくてもいいんだよ? アキトくんと2人でもぜんぜん行くし」
「そうだよ。僕としても、苦手な人に無理強いはしたくないし、ほんと良かったらだから」

「いえ、行ってみたいなとは常々思っていたんです。ですから本当にいい機会だなと思って。お二人とならきっと楽しいでしょうし」

 笑顔を見せる雪希の顔には、僕たちへの気づかいの色は感じられない。
 これなら、このまま誘っても大丈夫そうかな。

「そういうことなら、3人で行こうか」
「じゃ、アキトくん予約よろー。2時間でいいよね?」

「放課後だし、遅くならないようにしたらそんなもんかな。雪希は門限とかある?」
「特に遅くなるとかでなければ大丈夫なので、もろもろ全部お任せします」

「了解。機種も適当に決めとくね」

 僕はスマホを取り出すと、アプリで駅前のカラオケルームを3人×2時間でチャチャッと予約した。

 というわけで、僕とひまりちゃんと雪希で、親睦を深めるための放課後カラオケに行くことになった。

 登校時と同じく、僕を間に挟んでひまりちゃんと雪希が僕の左右を固める。
 もちろん朝と同じく、周囲の視線は僕たち(正確にはひまりちゃんと雪希)に釘付けだ。

 話の中身は主に、高校での初めての授業についての感想だった。

「数学が中学までと比べてかなり難易度が上がった気がしました。予習・復習は欠かさないようにしないとです」
「わかる~! 頭の中でしっかりと整理できてないと解けない感じだよね~!」

「僕は世界史が大変そうだったかな。あんなに細かく人名や年号を覚えるのかって、ちょっとびっくりしたよ」
「うんうん、びっくりするほど細かかったよね~!」

「ひまりさんはどの教科が大変そうに感じましたか?」
「わたし? わたしはまだ授業初日だし、まぁまぁどれも行けそうな感じかな?」

「ううっ、余裕がありそうで羨ましいです」
「ひまりちゃんはすごく成績優秀なんだ。僕も高校受験の時に、ひまりちゃんにかなり面倒を見てもらったくらいでさ」

 もしひまりちゃんの家庭教師がなく、自分1人で勉強していたら、僕は成績不足でこの高校には入れなかっただろう。

 そうするとひまりちゃんと一緒にお昼も食べられなくなるし、雪希とも出会うことができなかった。
 本当にひまりちゃんには感謝している。

「もう、アキトくんってば。それはアキトくんが頑張ったからでしょー。わたしと一緒に勉強した後も、毎日夜遅くまで勉強してたの、知ってるんだからー」

「ひまりちゃんだって受験だったのに、時間を作って僕に勉強を教えてくれたんだから、なんとか結果を出したくてさ。あの時は本当に本気で頑張ったから」

「それで結果を出しちゃうんだから、やっぱり本気モードのアキトくんはカッコいいなぁ。むふふ……」

 ひまりちゃんがニヤニヤと妙に嬉しそうに笑った。

「だから通学路で、雪希もいるのにそういうことは言わないの」
「あー! アキトくんってば照れてる~♪」

「照れてないから」
「照れてるでしょー♪」

「ふふっ、本当にお二人は仲が良いんですね」
 僕とひまりちゃんのやり取りを見て、雪希がクスクスと上品に笑った。

 なんて話をしている間にすぐに駅前についたので、僕たち3人は予約したカラオケルームに入店して受付を済ませ、指定された部屋へと向かった。
 席順は、僕を真ん中に挟んで右にひまりちゃん、左に雪希が座った。
 しかも2人とも、僕に肩が触れるくらいに密着してだ。

 カラオケルームの狭い室内で、女神とプリンセス(ひまりちゃんと雪希のことね)にサンドイッチされて、僕は少し緊張してしまう。

 いや、ひまりちゃんと隣り合って座るのにはもうすっかり慣れているから、緊張しているのは雪希に対してだな。
 そして雪希がこんなにもくっついて座ることに、僕は見当がついていた。

 雪希はカラオケ初心者だ。

 ひまりちゃんが僕にくっつくように座ったのを見て、カラオケではこういう風にしないといけない思ったに違いない。

 僕もそうだけど、初心者って模倣から入るから。

 でも雪希がそれを嫌がってる様子もないし、指摘して変な空気になるのも嫌だったので、僕はあるがままを受け入れることにした。

 なーに。
 ひまりちゃんがもう1人いると考えれば、なんてことはない――ような気がしないでもない――こともない。

 うん、雪希をひまりちゃんと思うのは、やっぱりちょっと無理がある。
 雪希は雪希、ひまりちゃんはひまりちゃんだ。
 つまりやっぱり雪希に対しては恥ずかしさを感じてしまう僕だった。

 それでも僕は緊張をなるべく見せないようにしながら、

「この機械で、歌手とか曲名とか歌詞で検索して、歌いたい曲を決めたら送信を押すだけ。ね、簡単でしょ?」

「はい、これならすぐにできそうです」

 初カラの雪希に、電子端末での曲の入れ方を教えてあげたり、

「ここのドリンクバーはスイッチを押してる間だけ出るタイプだから、コップを注ぎ口に置いて、欲しいドリンクのボタンを押して、好みの量になったら指を離してね」

 いったん部屋の外に出て、ドリンクバーの使い方を教えてあげたりする。

「わかりました。ですがかなり種類があるんですね。少し迷ってしまいます。ちなみになんですが、暁斗くんのお勧めはありますか?」

「僕とひまりちゃんはいつも、初手はメロンソーダなんだ。ジャンクな味と炭酸ののどこしがないと、カラオケに来た気がしないっていうか」

「でしたら私もそれにします」
「雪希ってこういうジャンクなの、好きなんだ?」

「あ、えっと、そういうわけではないんですが。せっかくなので、一緒のを飲んでみたいな、と思いまして」

「ひまりちゃんと一緒のを飲みたいだなんて、すっかり仲良くなったみたいだね」

 雪希は中学の時に友達がいなかったという話を聞いていたので、僕は少しだけ安心した。
 なんとなく、2人はいい友達になれるんじゃないかと思う。
 根拠はないけど。

「ひまりさんじゃなくて、暁斗くんと同じものが飲みたかったんです」

 と、雪希が何事か口走ったが、小声だったのもあって、カラオケの店内特有の喧騒にかき消されてしまい、僕はそれを聞きそびれてしまう。

「ごめん、周りがうるさくて聞こえなかったんだ。もう一回言ってもらっていい?」

「な、なんでもありませんので! 独り言ですから!」

 雪希が今度はやけに大きな声で言った。
 顔が赤い。
 どうやら独り言を言ってしまったことを恥ずかしがっているようだ。
 だったらこれ以上の追求はしちゃいけないな。

「じゃ、部屋に戻ろうか。ここだけの話、ひまりちゃんは僕と離れるとすぐに拗ねちゃうからさ」

「ふふっ、なんとなく想像できちゃいます」
 雪希が上品に口元を抑えながらクスクスと笑った。
 僕は自分の分とひまりちゃんの分のメロンソーダを両手でそれぞれ持って、同じくメロンソーダを持った雪希と、ひまりちゃんの待つ部屋へと帰還する。

 戻ってくると、トップバッターで曲を入れていたひまりちゃんがちょうど歌い始めるところだった。

 制服を可愛く着崩して歌いやすくしつつ、堂々たるスタンディングスタイルで歌うひまりちゃんを横目にソファに座ると、雪希はやっぱり肩をくっつけるようにしてすぐ隣に座った。

「入れたてのモーニングコーヒー~♪ アキトくんと一緒にワンナイ~♪」
 そしてひまりちゃんはというと、初っ端から歌詞を改変して好き放題に歌っていた。

「こらこらひまりちゃん、勝手に歌詞を捏造するんじゃありません」

 よりにもよって、一夜を共にした男女が朝、入れたてのモーニングコーヒーを飲むって歌詞を、兄妹に変えてしまうのはまずいだろう。

 一夜を共にするってのは、昨日の夜にやったみたいにただ一緒に寝るって意味じゃないんだからな?

「えへへ~♪」
 もちろんひまりちゃんは反省の色はまったくなし。
 むしろドヤ顔で親指をグッと立ててくる始末である。

 めちゃくちゃ可愛くて、僕は一瞬、息をのんで見とれてしまった。

 のっけからノリノリでカラオケを楽しむひまりちゃんと、おそらくは僕とのやりとりを見て、

「ふふふふっ」
 雪希はもう笑いを堪えられないようだった。

 ちなみにひまりちゃんは歌もかなり上手い。
 ひまりちゃんは可愛いし、歌ってみた動画でも上げたらバズったりするんじゃないかな?
(ただし歌詞は改変せずに←重要)

 そんな歌うまフリーダムソンガーひまりちゃんに続いて、2番手で僕が歌う。

 同世代なら誰でも知っているような流行りの曲を、音程だけは外さずに平凡に歌っただけだったけど、

 シャンシャン♪ シャンシャン♪
「いぇい!」

 ひまりちゃんが無料貸し出しのタンバリンを振り振りしながら合いの手を入れてくれたり、サビで絶妙なハモリを入れてくれたりと、それはもう盛大に盛り上げてくれたので、まるで歌うまさんになった気分だった。

 でも、スマホで撮影だけはやめて欲しい。
 そんなに上手じゃないので、正直恥ずかしかった。

 ま、ひまりちゃんに言っても絶対に聞いてくれないので、イチイチ言わないけれども。

 絶対に譲れないこと以外は、人間諦めが肝心だ。

 そして最後に雪希が3番手で歌い始めた。

「~~~~♪」

 雪希はゆったりとしたバラードを、しっとり丁寧に歌い上げていく。
 なにより印象的だったのは、その声の美しさだった。

 少し甘ったるい感じの可愛い声を出すひまりちゃんと違って、雪希は冬の夜空のように透きとおった、澄んだ声をしていた。

「すごーい、雪希ちゃん上手~!」
「綺麗な声だったから、思わず聞き入っちゃったよ」

「そ、そんな。大げさですよ」
 雪希が胸の前で手を左右に振って否定する。

「大げさじゃないしー! 普段から綺麗な声だなーって思ってたけど、歌うとヤバいかも! ねー、アキトくん?」

「ひまりちゃんの言う通りだよ。雪希が歌い始めてすぐに、思わず引き込まれたもの」

 間奏の間に、ひまりちゃんと僕は雪希を褒め倒した。
 ひまりちゃんも上手だけど、雪希も負けてはいなかった。

 ひまりちゃんの歌はほわほわ幸せな気分にさせてくれるけど、雪希の歌は人を引き付ける力があった。
 これまた歌ってみた動画をアップしたらバズること間違いなしだろう。

「あ、ありがとうございます」

 しかし雪希はというと褒められ慣れていないのか、恥ずかしそうに視線を逸らすと、ちょうど始まった2番をいそいそと歌い始めた。

 またまた雪希の歌に引き込まれてしまう僕とひまりちゃん。
 ひまりちゃんの撮影してる動画に雪希の歌も残っているだろうから、後で聞かせてもらおう。

 とまあそんな感じで、ひまりちゃんと雪希と3人で行ったカラオケは、盛り上がりに盛り上がったのだった。
◇ ひまりタイム ◇

 その日の夜。

 宿題やら明日の用意やらなんやらをバッチリ終えたわたしは、自分のお部屋のベッドで寝転がりながら、今日ゲットしたばかりの最新動画の観賞会を行っていた。

「むふっ、むふふふ──」

 スマホで見ているのは今日行ったカラオケで、アキトくんが熱唱している姿だ。

 アキトくんが流行りの曲を一生懸命歌っている。
 めちゃくちゃ格好よかった。
 格好よすぎて、何度見返してみてもニヤニヤが止まらなくて困る(困らない)。

 もちろん、歌そのものは上手いか上手くないかで言えば、可もなく不可もなくなんだと思う。

 だけど画面の中のアキトくんは、すっごく輝いていた。
 歌が上手いかどうかなんて関係ない。
 もうキラキラしていたから。

「入学式の日から、アキトくんってば昔に戻ったみたいだよね。一生懸命ですっごく素敵」

 何か切っ掛けでもあったのかな、と少し気にはなったけど、ひまりちゃんとアキトくんの愛のメモリーをどれだけ掘り返してみても、思い当たる節は見当たらなかった。

 多分だけど、アキトくんに備わった内なるキラキラパワーが、アキトくんに輝くことを求めたのだ。
 きっとそうだ。
 わたしは妹なのでわかるのだ。

「最近の控えめで落ち着いたアキトくんも悪くなかったけど。やっぱりアキトくんと言えば、こうじゃなくっちゃね♪」

 周りのことなんて関係なしに、自分が正しいと思ったことをする。
 虐められていたわたしを助けてくれた、わたしの王子様。

 わたしはカラオケの映像を無限ループして王子様アキトくんを堪能した。


「さーてと、そろそろアキトくんが寝る時間だよね。今日もアキトくんと一緒に寝ようっと♪」

 え?
 アキトくんに昨日『今日だけだよ』って言われただろって?

 チッチッチ!

「アキトくんは口ではダメって言っても、わたしがお願いするとすぐに『しょうがないな、ひまりちゃんは』モードになって、一緒に寝てくれるんだよねー♪」

 アキトくんは、ダメなことはどれだけ甘えても絶対に折れてくれないタイプなので、つまり甘えさせてくれるってことは実質ウェルカムってこと!

 はい、論破!
 ふふふ、わたしがアキトくんと何年一緒にいると思ってるのさ?

 わたしは壁に耳を付けて、隣の部屋――アキトくんの部屋の様子を窺った。
 そして少し待ってタイミングを見計らうと、枕を持って部屋を出る。
 そのまま、アキトくんのお部屋へと向かった。

 コンコン。
 ノックとほぼ同時にドアを開けると、ベッドの上に横になったアキトくんと目が合った。

 ふふん。
 さっき少し待ったのは、アキトくんが寝るタイミングを見定めていたんだよねー。

 というのも、アキトくんは寝る前に必ず、5分ほどストレッチをしてから、明日の準備を再チェックするという習慣がある。

 ストレッチの時にベッドが軋む音がわずかに聞こえるので、一度そうと分かってしまえば、タイミングを計るのは楽勝だった。


「こんな時間にどうしたのひまりちゃん?」
「今日も一緒に寝たいな? ダメ?」

「ダメに決まってるでしょ。僕たちもう高校生だって言ったよね?」
「どうしても、ダメ?」

「だーめ」
「新しい環境で不安なの」

「とてもそうは見えなかったけど……。勉強も余裕そうだし、カラオケはノリノリだったし。むしろ新入生の誰よりも楽しそうに、高校生活をエンジョイしていたよね?」

「だめ、アキトくん……?」
「……まったくもう。ひまりちゃんはしょうがないなぁ。ほら、おいで」

「やった♪」

 ほら、ね?
 アキトくんってば、わたしに甘々なんだから♪

 わたしは今日も今日とて、アキトくんのベッドに入り込むことに成功する。

「本当に今日だけだよ」
「はーい!」

「返事だけはいつもいいんだよなぁ……」
「えへへ~♪」

 笑って誤魔化しながら、アキトくんの左腕を抱きしめながらピトッとくっつく。

「ま、ひまりちゃんらしいけどね」
「ぬくぬく~♪」

 こうして今日もわたしは、アキトくんと一緒におやすみしたのでした。

◇ ひまりタイム END ◇