翌朝。
高校へと向かう通学路。
「昨日はよく寝れちゃった♪ やっぱり睡眠って大事だよね~」
「言っておくけど、今日は別々に寝るからね」
「ええ~! けち~!」
「昨日も言ったけど、僕たちもう高校生なんだから」
「アキトくんだって、ぐっすり寝れたって言ってたでしょ~!」
「それとこれとは話が別だから」
「別じゃないし~!」
「ほら、人通りも増えてきたからこの話は終了な」
「はーい」
朝からご満悦なひまりちゃんに、兄としてしっかり釘を刺しながらと高校に向かっていると、駅前で雪希と出くわした。
「おはようございます暁斗くん、ひまりさん」
ドラマで見るような極上の女優スマイルとともに挨拶をされて、
「お、おはよう」
僕は少し緊張気味に、
「おはよー、雪希ちゃん♪」
ひまりちゃんはにへらーと、いつもと変わらぬ可愛らしい笑顔で挨拶を返す。
「もしかして待っててくれた?」
少し気になったので聞いてみる。
「えっと、少しだけ。でも駅を降りて見渡したら、遠くにお二人の姿が見えたので、本当に少しだけです。見えなければ1人で行きましたから」
「わーい、ありがとう雪希ちゃん♪」
ひまりちゃんが雪希に抱きついた。
「ひ、ひまりさん?」
「ん~、いい匂いアーンドいい抱き心地~♪」
「えっと、あの──」
「それに髪、すごいサラサラだよね? どこのシャンプー使ってるの? 外国製? 特注品? 教えて欲しいなぁ」
「普通にスーパーで売っている花王のシャンプーですけど……」
「え~! 絶対ウソだって~! ね、アキトくんの内緒話いっぱい教えてあげるから、教えて~?」
「ほ、ホントです……ち、ちなみに、どんな話なんでしょうか?」
「そうだね~。たとえば――」
「こらこらひまりちゃん。僕を交渉材料にするのはやめようね」
イキっていたころの黒歴史を暴露されてしまっては大変だ。
思い当たる節はそれこそ山ほどある。
僕は慌てて2人の会話に割って入った。
そんな可愛いひまりちゃんと美人の雪希。
目を引く2人が仲睦まじくじゃれ合う姿に、道行く生徒たちがほとんど全員が全員、視線を向けてくる。
ついでに僕に向けて「なんでこいつが一緒なんだ?」みたいな怪訝な視線も飛んできた。
ま、気にしても仕方がない。
ひまりちゃんと雪希という2つの美しい花の前では、僕なんてただの名もなき雑草なんだから――今は、まだ。
「ひまりちゃん。ほら、行くよ」
「はーい」
僕を真ん中に、雪希を解放したひまりちゃんを左に、雪希を右にして3人で並んで歩きだす。
僕たちは昨日知り合ったばかりってこともあって、会話はほとんどがお互いの身の上話だ。
「それで、アキトくんがわたしを家に連れていってくれて、特製エビチャーハンをご馳走してくれたの。アキトくんのおうちは大衆食堂をやってて。あ、今もやってるんだけど。もうすっごく美味しくて、テレビで取り上げられたこともあるんだよ?」
「なるほど、暁斗くんは昔からヒーロー気質だったんですね」
「そうなのそうなの! アキトくんはわたしのヒーローなんだから♪」
幼い頃の僕との思い出を嬉しそうに語るひまりちゃんと、それを興味津々な様子で聞いている雪希。
僕は盛り上がる会話になるべく水を差さないように気を付けながら、気になるところに少しだけ訂正を付け加える。
「ご馳走したのは僕じゃなくて父さんだけどね」
「アキトくんが連れていってくれなかったら食べられなかったんだし、おおむね合ってるしー」
「ひまりさんが暁斗くんにベッタリになるのも納得ですね」
「でしょでしょ?」
「私も昨日、助けてもらってすごく頼もしく感じましたから」
「ふーん?」
「な、なんでしょうか?」
「別にー。アキトくんはモテるなーって思っただけー」
「そ、そういうのでは、あの、その……」
僕を間に挟みながら、2人して僕のことでキャイキャイと盛り上がる。
なんとも気恥ずかしい気分にさせられながら、僕は通学路を歩いて行った。
高校へと向かう通学路。
「昨日はよく寝れちゃった♪ やっぱり睡眠って大事だよね~」
「言っておくけど、今日は別々に寝るからね」
「ええ~! けち~!」
「昨日も言ったけど、僕たちもう高校生なんだから」
「アキトくんだって、ぐっすり寝れたって言ってたでしょ~!」
「それとこれとは話が別だから」
「別じゃないし~!」
「ほら、人通りも増えてきたからこの話は終了な」
「はーい」
朝からご満悦なひまりちゃんに、兄としてしっかり釘を刺しながらと高校に向かっていると、駅前で雪希と出くわした。
「おはようございます暁斗くん、ひまりさん」
ドラマで見るような極上の女優スマイルとともに挨拶をされて、
「お、おはよう」
僕は少し緊張気味に、
「おはよー、雪希ちゃん♪」
ひまりちゃんはにへらーと、いつもと変わらぬ可愛らしい笑顔で挨拶を返す。
「もしかして待っててくれた?」
少し気になったので聞いてみる。
「えっと、少しだけ。でも駅を降りて見渡したら、遠くにお二人の姿が見えたので、本当に少しだけです。見えなければ1人で行きましたから」
「わーい、ありがとう雪希ちゃん♪」
ひまりちゃんが雪希に抱きついた。
「ひ、ひまりさん?」
「ん~、いい匂いアーンドいい抱き心地~♪」
「えっと、あの──」
「それに髪、すごいサラサラだよね? どこのシャンプー使ってるの? 外国製? 特注品? 教えて欲しいなぁ」
「普通にスーパーで売っている花王のシャンプーですけど……」
「え~! 絶対ウソだって~! ね、アキトくんの内緒話いっぱい教えてあげるから、教えて~?」
「ほ、ホントです……ち、ちなみに、どんな話なんでしょうか?」
「そうだね~。たとえば――」
「こらこらひまりちゃん。僕を交渉材料にするのはやめようね」
イキっていたころの黒歴史を暴露されてしまっては大変だ。
思い当たる節はそれこそ山ほどある。
僕は慌てて2人の会話に割って入った。
そんな可愛いひまりちゃんと美人の雪希。
目を引く2人が仲睦まじくじゃれ合う姿に、道行く生徒たちがほとんど全員が全員、視線を向けてくる。
ついでに僕に向けて「なんでこいつが一緒なんだ?」みたいな怪訝な視線も飛んできた。
ま、気にしても仕方がない。
ひまりちゃんと雪希という2つの美しい花の前では、僕なんてただの名もなき雑草なんだから――今は、まだ。
「ひまりちゃん。ほら、行くよ」
「はーい」
僕を真ん中に、雪希を解放したひまりちゃんを左に、雪希を右にして3人で並んで歩きだす。
僕たちは昨日知り合ったばかりってこともあって、会話はほとんどがお互いの身の上話だ。
「それで、アキトくんがわたしを家に連れていってくれて、特製エビチャーハンをご馳走してくれたの。アキトくんのおうちは大衆食堂をやってて。あ、今もやってるんだけど。もうすっごく美味しくて、テレビで取り上げられたこともあるんだよ?」
「なるほど、暁斗くんは昔からヒーロー気質だったんですね」
「そうなのそうなの! アキトくんはわたしのヒーローなんだから♪」
幼い頃の僕との思い出を嬉しそうに語るひまりちゃんと、それを興味津々な様子で聞いている雪希。
僕は盛り上がる会話になるべく水を差さないように気を付けながら、気になるところに少しだけ訂正を付け加える。
「ご馳走したのは僕じゃなくて父さんだけどね」
「アキトくんが連れていってくれなかったら食べられなかったんだし、おおむね合ってるしー」
「ひまりさんが暁斗くんにベッタリになるのも納得ですね」
「でしょでしょ?」
「私も昨日、助けてもらってすごく頼もしく感じましたから」
「ふーん?」
「な、なんでしょうか?」
「別にー。アキトくんはモテるなーって思っただけー」
「そ、そういうのでは、あの、その……」
僕を間に挟みながら、2人して僕のことでキャイキャイと盛り上がる。
なんとも気恥ずかしい気分にさせられながら、僕は通学路を歩いて行った。