それは約一年前のこと。
 いとこの女の子が教えてくれた。
 当時、僕は中学2年生で、その頃は『る●うに剣心』にハマって漫画を買い集めていた。
 しかし、自宅へ遊びに来たいとこが、僕の本棚を見てこう言ったのだ。

「あ……幸太郎くんって、あの作品にハマってんだ?」
 
 と引きつった顔で笑う。
 当然、僕はその反応に怒る。
 
「なんでそんな顔をするの? おもしろいじゃん、これ。主人公もカッコイイし!」
「いや……その作品も、幸太郎くんの言っていることもわかるんだけど。私の友達がね……」
「へ?」

 この時、いとこは小学5年生ぐらい。
 友達も同い年の女子小学生だ。

「その子の家に、薄い本があってさ。主人公と”二重の極み”の人がめっちゃキスしててさ……」

 僕の脳内は大パニックを起こし、発狂しそうになった。
 あんなかっこいい主人公やキャラクターたちが、激しいおせっせをしているなんて……。
 世界観はその一言で崩壊してしまい、僕はその作品をしばらく読めなくなってしまう。
 読めばすぐに、いとこの発した映像が脳内で蘇るからだ。

 このトラウマを無くすため、僕は半年以上のイメージトレーニングを行った。
 別に同性愛を扱った作品を見て、差別するつもりはないが……。
 まさか二次創作とは言え、アクション満載の作品がそんな風に変えられてしまうなんて。
 14歳の少年には、荷が重かった。

 絡みのシーンを妄想しては、発狂する日々。
 実際に薄い本を観てないのに……。どうやら僕は想像力が豊かな方みたいだ。
 半年間、彼らの絡みを想像しては発狂を繰り返す。

 そのトレーニングにより、僕は見事トラウマを打ち消すことに成功した。
 いや、正しくは慣れた……と言うべきか。

 ~それから1年後~

 ようやく、トラウマから逃れることが出来たのに。
 ”やおい”という言葉を調べたが為に、また同じ目に合うとは……。
 僕は作品への悪影響を考えて、すぐさまATフィールドを全開。
 母さんという、14番目の使徒の侵入を防ぐことに成功した。

 しかし、母さんの好奇心は止まることなく。
 その事件をきっかけに、どんどんその世界にハマってしまう。
 もう僕がやおいという言葉の意味を理解できたのに、BLと薄い本を漁りまくる。

 良いものはいい、という理念のもと。母さんは布教したがる。
 僕にBL耐性ができたのは、母のせいだ。

「これ、いいわよ」

 とよくマンガを持ってくるのだが、中には地雷がたくさん埋っている。
 日常系の平和な作品かな? と読み進めていたら、急に男同士でやり始める……。
 そんなシーンを見て、僕は叫ぶ。

「って、BLじゃねーか!?」

 これが繰り返し、何十年も続くのであった。