「おい、有田、C地区の屋敷の退魔依頼ってまだ誰も行ってないよな?」
「ああ、あれ、大丈夫だ。さっき行ってもらった」
「やべえよ、あれ、再調査の結果がさっき出たんだけどさ、低級じゃなかったんだよ!」
「ええ? 低級退魔師に行ってもらったよ、やばいじゃん」
 有田は青ざめて同僚を見た。
「誰? 早く連絡して、中止して」
「えっと、茜結珠さんなんだけど……」
 聞こえた言葉に、龍真は驚愕した。
 カウンターをざっと飛び越え、職員の襟首を掴む。
「わわ、なんだ君は」
「誰が退魔に行ったって!?」
「あ、茜結珠さん……」
「その場所はどこだ、俺が行く!」
「あなたは……」
 有田に話しかけていた職員が戸惑いながら尋ねる。
「藤小路龍真、上級退魔師だ」
「あの有名な藤小路さん!?」
「いいから早く教えろ」
「ま、待ってください」
 有田は急いでパソコンに向かい、結珠に送ったのを同じデータを龍真のスマホに送る。
「データを送りました。車で送りますから。お前は茜結珠さんに連絡して退魔を中止するように言ってくれ」
 後半を同僚に向かって言い、有田は結珠の退魔師データを画面に出す。
「わかった」
 有田の同僚が頷く。
 有田は急いで上着を羽織って、龍真とともに退魔協会を出て行った。