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 退魔協会で部長に捕まっていた龍真は、ようやく解放されてほっと息を吐いた。
 話は結珠のことだった。
 そろそろ彼女を独り立ちさせたい、と言われて龍真は断った。
「でもさあ、上級の君がいつまでも下級のお世話をしてるってのもねえ。ただでさえ人手が足りないのに、上級の君がさあ」
 部長は懇願するように龍真を見る。
「結珠のことだけはどれだけ頼まれても駄目です」
「結珠ちゃんが大事なのはわかるけどさ、だったら彼女に引退してもらって、安全なところへ……」
 言いかけた部長は(びくっとして言葉を切る。)龍真の殺意のこもった目でにらまれ、びくっとして言葉を続けられない。
「わかったよ、だけどもうちょっと上級の仕事をしてもらわないと」
「俺、大学生ですよ。授業もあるうえ、ここの仕事してたらバイトもできないのに。この仕事、危険なわりに給料少ないし。そうだ、結珠と一緒に辞めようかな」
 にやり、と笑って部長を見る。
「わかったよ、給料上げるから。結珠ちゃんとのペアも認めるから」
 部長は観念したように言った。
「話が早くて助かります」
 にっこりと笑って龍真は言う。
「そのかわり、単独の依頼もちゃんと受けてよね」
「わかってますよ。話は以上ですよね、帰ります」
 龍真は話を打ち切って出口へと向かう。
 途中、退魔依頼受付カウンターでバタバタと人が走っているのが見えた。