タクシーを降りた結珠は目の前の古屋敷に頬をひきつらせた。
「ねえ、ほんとにひとりでやるの?」
 姿を現した使い魔のタマが不安そうに言う。
「だって、はやく独り立ちしたいじゃない」
「龍真様にいいとこ見せたいのはわかるけどさ……不安だよ。僕は猫又になってからそんなにたってないから妖力が弱くてサポートも下手だし」
 タマはそわそわとしっぽを動かす。
「大丈夫だって。龍真と一緒ならたくさん封印してきたじゃない」
「だけど、もし低級に見せかけた上級の妖だったら? 知恵をつけた妖はそういう偽装をするって言うじゃん」
「退魔協会はちゃんと調べてからわりふってるから大丈夫よ」
 実際、結珠は今まで一度もそんなミスには遭遇していない。
「えっと、まずは結界を張る」
 スマホを出して、退魔アプリを起動する。『結界を張る』を選択してタップ。
 ぶん、と音がして結界が屋敷の敷地に貼られる。これでもう一般人は入って来られない。
「さあ、行くよ」
「うん!」
 結珠はタマを伴い、預かった鍵で玄関の鍵を開けて中に入っていった。