龍真は上級退魔師だから、本来ならもっと強い妖の退魔に駆り出されるはずであり、自分程度に関わっている場合ではないのだ。
「……はい、はい、すみません」
 ふと、電話で謝っている男性の声が聞こえた。
「いえ、その件につきましては……決して、低級の妖だからとあとまわしにしているわけではなくて、順番に退魔をしておりますので……」
 職員がぺこぺこと頭を下げながら電話の相手に謝っている。
「今すぐ来いとおっしゃられましても、人手が足りなくてですね……」
「あの……」
 結珠は思わず話し掛けていた。
「よかったら私、行きましょうか? 低級ですよね?」
 職員は驚いて結珠を見た。
「少々お待ちください」
 電話を保留にして、彼は目を輝かせて彼女を見る。
「ほんとに、行ってくれる?」
「はい。低級しか無理ですけど」
「やった、ありがと、じゃあすぐ手配する」
 職員は顔を輝かせ、保留を解除すると相手の人に「これから行きます!」と伝えていた。
 職員はその後、依頼主や依頼された場所などのデータを結珠に送ってくれた。結珠は添付された地図を元に退魔協会が用意したタクシーで現場に向かった。