未熟なスマホ退魔師は過保護な幼馴染に溺愛される

「タマ、落ち着いて」
 結珠はタマを撫でてなだめる。
「夜刀、からかうな」
 あきれたような龍真の言葉に、夜刀がふっと笑う。
 アメーバが地面にすべて染み込んだあと、夜刀は前足をさっとふるった。
 直後、黒い稲妻が走る。
 屋敷には屋根から一直線に穴が開き、夜刀が前足を上げると、引っ張り上げられるかのようにずるずると木の根のような塊が現れた。
 本体は抵抗するようにうねうねと根を動かす。
「龍真」
「了解」
 龍真は黒龍に答え、スマホをかざす。
 退魔アプリのターゲットマークに本体を捉え、退魔札を投げる。
 木の根が光に包まれた。あがくように根をふりまわすが、やがて完全に光に包まれて龍真のスマホに吸い込まれて消えた。
「退魔完了」
「地面の中のアメーバはどうなるにゃ?」
「本体がいない今、自然に消えるから大丈夫」
 龍真は結界を解除し、夜刀に頼んで自分たちを地上に降ろしてもらう。
 ふたりといっぴきを下ろしたあと、夜刀は龍真の影に消えた。
「よかった、ご無事で!」
 なりゆきを見守っていた植田が駆け寄って来る。