未熟なスマホ退魔師は過保護な幼馴染に溺愛される

 ばきばき!
 大きな音と共に、雨どいが崩れ始める。
「きゃああ!」
 悲鳴を残し、結珠の体はアメーバに向かって落ちて行った。

***

 龍真がその屋敷に到着したとき、簡易結界の中はアメーバのようなもので半ばほど満たされていた。
「こんなことって」
 植田は呆然と呟く。彼は妖をろくに見たことがない。その上こんなものは初めてだった。
 龍真が眉を寄せたとき、二階の窓に人影が映った。
「結珠!」
 思わず叫ぶが、彼女には届かない。
 結珠はタマとともに窓の外に出て、タマを屋根の上に放り投げた。続いて雨どいを登り始める。
夜刀(やと)
 龍真が呼ぶと、彼の影から真っ黒な龍が現れた。
 植田は初めて見る彼の使い魔に驚き、尻餅をつく。
 黒龍の全長は二階建ての家よりも高く、そびえるように空中に浮いている。
「俺を乗せて結界の中へ入ってくれ。結界は破った直後に張り直す」
「承知」
 短く答え、こうべを彼のために垂れる。
 彼が首にまたがると、黒龍は軽々と結界の真上に飛んだ。