未熟なスマホ退魔師は過保護な幼馴染に溺愛される

 その窓からは庭の木が見える。
「あの木から降りられないかにゃ」
「どうかな」
 タマならたやすいだろうが、結珠にはできるようには見えない。
 とりあえず窓を開け、外を見て愕然とした。
 結界の中をアメーバが満たそうとしている。木の上部と二階だけが水の中に浮かぶように存在していた。
「この量、どこに隠れてたの!?」
「逃げられないにゃ」
 タマはおろおろと歩き回る。
「攻撃性は低いみたいだけど……」
 スマホをタップして攻撃用の御札を探す。
 アメーバに効くものはどれなのか。水系だと余計に増えそうだし、風系も駄目な気がする。
 とりあえず火の御札をタップして、窓の外のアメーバに向ける。ターゲットマークを確認してから指をスライドして攻撃用の御札を射出する。
 スマホから発射された退魔の力はアメーバの表面でバチっと火花を散らして消えた。
「この程度じゃ効かないか」
 結珠は歯噛みする。
 土も水も風もすべて試したが、効果は薄かった。普通ならもう少し手ごたえがあるのに。
 こちらの攻撃が効かないために上級に認定されたのだろう。
 外のアメーバも徐々に増えて、一階の屋根に到達していた。
 どうしたものかと悩んで庭を眺め、ふと気が付いた。
 庭の木も家自体も、溶かされていない。