起きた時、汗びっしょりになっていた。

とうとうやってしまった。私は恐怖に駆られた。

 今週土曜日、東条先生とアポイントがとれたというラインが清水さんから届いている。
すぐに同行させて欲しいと返事をした。
清水さんは快くそれを受け入れてくれた。

 昨夜、黒頭巾を殺してから、私は自分が加速度的に狂いだしたのを感じていた。

耳元でざわざわと、聞こえないはずの声がすることが増えた。
全身に激しい痒みを感じて、体を掻き毟りたい衝動が込み上げる。
真凛の手首の傷、あれはきっとこれだ。

誰かに見られている気配を強く感じる。
ふと闇を覗くと、青い目が私を見つめていた。

そう、千姫の目だ。

 授業中、いつの間にか無心に手を動かしていることが増えた。
板書しているわけではない、ノートに物騒な文字を書き連ねているのだ。

 殺す殺す殺す。

私のノートはその二文字に占領されつつある。
そのうち、真凛のように笑いだしたり、凶器を手に暴れたりするかもしれない。
毎日恐怖と焦燥感に襲われながら過ごした。
平凡な毎日が懐かしい。お願いだから、誰か助けて。

ああ、あの言葉さえ知らなければ、私は平穏で居られたのに。
自分が壊れる恐怖と、常に周囲に死者の気配を感じ続ける恐怖が、私を少しづつ壊している。
誰にともなく憎しみが沸く。

 不意に襲ってくる掻痒感、自己の喪失、亡霊たちの声、行き場の無い憎しみ。
それらに耐えながら、私はなんとか土曜日を迎えた。