その叫び声でわたしは目を覚ました。

 机に突っ伏して寝ていた。手には鎌を握っているが、鎌に血はついていない。
大川を殺したのは夢の中だったのだ。

 近頃、夢と現実の境目が曖昧だ。
いつ、さっきの夢のようなことが起きても不思議ではない。

 その前に、わたしが出来ることは一つ。

 死ななければ。それしか、大川を殺さない方法はない。この鎌で、自らの人生に幕を引くのだ。

 死ぬのは恐ろしい。死の先には、何があるのだろう。科学が発展してきた今でも、死については解明されていない。自ら未知の世界に飛び込むのは、震えるほど恐ろしい。

 友人を救うためだ。

 わたしは自分の首に鎌の刃先を押し付けた。横に引けば、刃が動脈を裂き、出血多量で死ねるだろう。
 手が震える。駄目だ、怖い。

 わたしは鎌を放り捨てた。かわりに筆を執り、この体験談を執筆する。

 わたしが自死したあとで、面白半分なスキャンダルになるのは御免だ。
せめて、わたしの身に何が起きたのか、鬼形村がいかに危険な心霊スポットであるかを書き記してから死のう。
わたしはそう考えたのだ。

きっとこれがわたしの最期の作品になるだろう。