僕らが互いに一番近くにいたのは実は1年前だったのだろう。
 後になってたやすく分かりえたことだけど、試すなら間違いなくそのときだったのである。

 あの日の彼女は、僕の思うような彼女は、今どれだけ探してみても、もうどこにもいない。

 それはとっさに頭で理解できるけど、やはり気持ちが追いつかない。
 
 誰もいない薄暗いオフィスで机に打ち伏した僕は、涙にならない涙で、ひとり静かに息を乱し肩を震わすばかりだった。 



(了)